貧乏歯医者が金持ち歯医者になったわけ

か強診の今昔

(背景)

歯科保険における点数改訂は時代の移り変わりと共に目まぐるしく変化している昨今であります。厚生労働省の一審議会のなかの中央社会保険医療協議会(中医協)の考える歯科が今後どうなるべきなのかを評価することにより、その評価項目が保険点数へと反映されています。

翻って10年以上前の歯科保険点数はどうであったか?小泉内閣の構造改革や自民党が政権与党から失墜し、民主党の掲げた蓮舫氏のあの有名な言葉の「2番ではダメなのですか?」に代表される仕分け事業等により年金、医療、介護の社会保障費は削られ2010年を越えるまでは医科、歯科、調剤の保険点数は引き下げられ続けてきたのであります。

膨れ上がる社会保障費は、特に医療費においては無駄を省き限りある財的資源を振り分けることで対応してきたと思われます。歳入を国債や消費増税にのみで対応することは時の政権与党の立場を失いかねないことは明らかでありました。特に消費増税は財務省は推し進めたかったと思うが、民意が得られない消費増税は自民党としても先伸ばしせざるを得ないことであったと考えられます。

そこで、医療費の引き下げに反対する医療団体および医師会、歯科医師会の意見が反映されることにやっとなった2010年以降、久しぶりの保険点数の引き上げの中で各論として取り上げるとしたらSPTの増点もその一つにあげられることだろうと思います。

それまでSPT は保険点数上あったものの点数は150点程度ととても初診算定を外してまでも重症化予防治療もしくは、今でいう安定期治療として算定するには非常に脆弱なものでありました。それが2010年度保険点数改訂で、以前は年の縛りもあり低点数でったSPT が年の縛りもなくなり300点に増点したのであります。実に2倍の点数評価となりました。

その後、SPT 1,2の出現やか強診の施設基準の評価によりSPT 1が350点、SPT 2が830点(20歯以上)となったのは周知の事実であります。2010年以前と比べると最大で5倍以上の評価となります。この事から国および中医協の考える歯周病の重症化予防治療は時に散見される梯子を外される事態には、当てはまりづらいと私は考察します。

(現在)

先に記載した梯子を外される事態としてあえて考えるとすれば、か強診の施設基準の取りにくさがあげられます。2016年度における、か強診の施設基準の緩さからは考えられないほどの条件項目や密度が加えられたのであります。青本ベースにおいても簡単な数行程度でったものが、想像もつかなかったほどのボリュームまで増えたのであります。

国として今現在目先の問題として掲げていることは2つあります。一つは2025年問題、もう一つは2040年問題である。2025年問題は団塊の世代が75歳を迎え後期高齢者となることであります。2040年問題は人口のピークを迎え人口減少へと突入するということである。いずれも社会保障費を増加させる事態であり、国家財政を強く圧迫することになります。我々は第二領域としてこの事を視野にいれて実践していかなければならないと考えます。

中医協の考えとして予測されることは、医療費を下げるエビデンスがある長期における重症化予防に対しては評価していると思われます。初診を減らして再診で算定をせざるを得ない状況は明らかであります。歯科疾患管理料2010年以前は130点であったものが、2010年には110点に引き下げられ、2020年度改訂では歯科疾患管理料は80点まで引き下げられました。実に40%減であります。また、6か月を越えた長期管理加算として一般歯科では100点、か強診の歯科医院には120点と一物二価の是非はあるものの国のあるべき姿としての歯科像への評価を考えさせざるを得ないです。

今回、コロナの影響によりマスコミの無知もしくは意図的な、不要不急としている歯科定期検診とされているメンテナンス(ここでは一般にいうメンテナンスとして表現します。日本歯科医学会の提唱する自費としてのメンテナンスとしてではないです。)が自粛という形でキャンセルとなり、患者数およびレセプト枚数の低下したことは多くの歯科医院で当てはまると思わます。(一部の歯科医院ではその限りにないと思われるますが…)

各歯科医院においてもメンテナンスの減少は目に余るものであったと思います。よって一時的にせよ治療型の医院にシフトせざるを得なかったのではないでしょうか。治療型によって患者一人単価をあげることによってなんとかしのいだのではないでしょうか。か強診の施設基準はその救いになる対策かもしれません。ある意味、コロナがなければ、か強診の施設基準をとろうとは思わなかった歯科医院もあるかもしれません。

か強診の施設基準をとるにあたっては、歯科医師会非会員であることは困難ではあれど、不可能なことではありません。今からでも遅くありません。経過措置を期待しつつ、まだ未取得の歯科医院は頑張っていただければと思います。

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