指導への心構え

個別指導の落とし穴 歯周病編

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さあ、これからカルテの閲覧と指導を始めよか。

 

派手なフルマウスの治療が好きやな、イケイケの算定をしとる。

さぞかし腕には自信があるんやろな。

そらこんな治療を毎日しとったら、こんなイキった態度になるで。

 

でもな、個別指導は勉強会やセミナーじゃないんや。

はっきり言って、治療のクォリティーなんか個別指導ではどうでもええ。

 

技官はちゃんと矛盾なく整合性が取れてるかどうかを見てるんや。

 

症例を褒めて欲しいんやったら、指導が無事終わってから勉強会にでも行ったらよろしいわ。

こっちはあくまで不当請求、不正請求を疑ってかかってる事をお忘れなく。

 

果たしてこの先生はどうやろうな?

まず目についたのは、歯肉剥離搔爬術(FOP)や。1ブロックずつ、全顎算定しとるな。

 

誰の入れ知恵か知らんけど、絵はちゃんと書いとる。そして文言も。

 

ちなみに歯周外科や難抜歯、GA切開や歯根端切除術などの「外科処置」は、

術式の絵や文言をカルテに記載する必要がある

くれぐれもお忘れなく。

 

なになに?No.15のメスを使用して切開してから、骨膜剥離子にて歯肉を翻転し、鋭匙で不良肉芽を除去し、

骨鋭縁をラウンドバーにて整形し、歯根面のデブライドメントを手用スケ―ラーにて行った。

最後に、5-0ナイロン糸にて懸垂縫合した。

なお、インストゥルメントはJIADSにて推奨されているものを使用。

 

最後の1文が余計やで、マウント取りに来てる感が鼻に付くわ。

 

クォリティーはどうでもええ、て言っとるやないか。

まあ、これだけ細かく書いてれば言う事はないわ。算定する期間の空け方も問題ない。

 

よく、1週間も経たんうちに連続した部位のFOPをしとる先生がおる。これはクサいで。

まだ治っても無い部位に被ってるけど、ほんまにやったんか?て目で見られるから。

 

まあ、答えは「やりました」でええんやけどな。

誘導尋問に引っ掛かって、「やってません」は一発アウトやで。

 

それはそうと、この先生は歯周病には一家言あるんかいな。また鼻の穴が膨らんどるわ。

こっちも技官として負けてられへんで。

 

こういう先生程はまりやすい落とし穴が青本の内容やからな。早速質問していこか。

 

まずは歯周基本検査についてや。チェック項目を聞いていく。ちなみに、

・歯周ポケット測定

・プロービング時の出血の有無

・歯の動揺度の検査

・プラークの付着状況の検査及び歯肉の炎症状態の検査

 

が、歯周病の診断に必要な検査や。

 

この先生はちゃんと答えられたからええけど、ここで躓く先生も多い。

こんな初歩の説明できんかったら、算定要件を満たしてないとみなされて自主返還まっしぐらやで。

気を付けてな。

 

で、また調子に乗り始めた。

ウチのスタディークラブでは、これに加えて根分岐部病変の有無と進行度、

骨の吸収状態や形態など総合的に判断して初めて歯周基本検査とみなします、やて。

 

だから、そこまではいらんのや。

まあ今回は何て事無い肉付けやからええけど、調子に乗って不要な事べらべら喋ってたら足元すくわれるで。

すでに事務官にいびられてるの忘れたんか?

 

FOPを算定する前の歯周精密検査や、歯周病の基本的な質問にはそつなく答えとる。

いらんデコレーションが気に入らんけど、わざわざ勉強したというよりは骨身に沁み付いている感じや。

臨床医としてただ者ではないのは確かやな。叩き甲斐のある相手やで。

 

ただ、世界最先端のAAP(アメリカ歯周病学会)ではどうやとか、予防大国スウェーデンではこうやとか止めてくれるか。

目の前におるのは日本の厚生労働省の技官や。ほんま堪忍やで。

 

まあ歯周病はこれで終いや、ほな次いこか。

 

・・・と思ったら、いかんいかん。俺とした事が一つ見逃しとったで。

 

さっきのFOPの文言に、「エムドゲイン(歯周組織再生療法)を填入した。」て書かれとった。

これ、保険診療では認められてへん材料やないか。

 

まさにその瞬間、事務官が横やりを入れてきた。

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