では、技官時代に患者やスタッフからどのような情報提供があったか、
より具体的に実例を元にみていきたい。
まずは患者からだ。
領収書と医療費通知に関しては少なからず齟齬が出る事はあるものだから、
余程乖離していなければ心配する必要はない。
ただしこの微々たる差に関してさえ、たくさんの通報があるのだ。
しかしそんな事をいちいち気にしている程、技官も暇ではない。
では、どのような通報が有力情報として扱われるのか?
その前に、患者からの様々な通報を供覧していきたい。
「治療費が高い!この先生、何か不正しとるんちゃうか?」
この部分だけ切り取ると、ドキッとする通報だが、そんなことはない。
なぜならそのほとんどが、費用が高い事に対するただの文句だからだ。
そっちで勝手にしてくれや、というようなしょーもない通報だ。
厚生局はカスタマーセンターちゃうねんぞ?と思ってしまう。
これは歯科医院に限った事ではないが、料金でいちゃもんを付けてくる人間は
どうしようもないのが多い。いや、むしろ調子に乗り続ける感じだ。
オレが聞いた話ではデンチャー作製において、セット後どうしても合わないというケース。
これは誰もが必ず経験する症例だろう。
その先生は結局、「よそで作るから治療費返せ」と言われて泣く泣く返金したそうや。
すると後日また電話がかかってきて、治療費が足らんかったから追加して金出せと
言われたそうや。
信じられへんけど、そういう奴はおる。
自費治療は各医院に契約書みたいなんがあるから知らんけど、保険治療はあらかじめ
負担割合が決まっとる。明朗会計や。
ちゃんと治療をしとるんや、それを入れ歯も返さんと金だけ返せ、やと?
このように金に汚い患者は腐るほどおる。
そういったクレーム対応として、実際オレも使ってみて効果的やったのが、金でごねてきた時に
「国で決められてる事なんで、国に聞いて下さい!」やな。
これは良く効くわ。
それでもまだごねてくるようやったら、しゃべる間も与えずに追い出すか
それこそ警察官よんだらええんちゃうか?
あまりにも調子こいてたら、ちょっとくらい痛い目見てもらわんとな。
患者からの通報はだいたいが取るに足らん内容やから当然、情報としては鮮度が劣る。
だから、そんなんいちいち気にせんでよろしいわ、と言いたいところやけど残念
ながらそう言い切れる話でもない。
そのなかに、核心をついた情報が混ざってるからや。
つまりそれが、厚生局側にとって有力な情報となる。
以前のコラムでも述べたが、そこにいわゆる「不正請求」と思われる
情報提供があるんや。
改めて説明すると、大きく分けて次の4つとなる。
①架空請求
②付増請求
③振替請求
④二重請求
だ。これは故意であろうがなかろうが、明確な証拠が残ってしまう可能性が
誰にでもあるので当然ながら要注意やで。
当然これも取るに足らん内容はあるけど、先生にとって致命傷を与えるような
内容だって、もちろんある。
そういう情報提供が積み重なると、どうなるやろな?
まだ個別指導で済んでラッキーやった、事にもなるんやで。
ええか、患者はしっかりみて治療・算定せなあかん。
医院が波に乗ってる時こそ、ここで足元すくわれる先生が多いんや。