ここで、不正請求について改めて確認しておきたい。
まず不正請求とは、診療報酬請求のうち故意や重大な過失が認められるもので、詐欺や
不法行為に当たるものだ。
文字に起こすだけで恐ろしいものだが、最も恐ろしいのは故意ではなくたとえ不可抗力のようなもので
あっても、不正請求とみなされればそこでジ・エンドというところだろう。
患者のために行った治療であっても、保険診療のルールに則っていなければ、
「診療実態がない」とみなされ不正請求という判断が下されてしまうので、
改めて言うまでもなく注意が必要だ。
では、それぞれ詳しく見ていきたい。
- 架空請求
これは、診療の事実がない架空の診療を実施したとして請求することである。
よく見られるのが親類の治療だろう。口裏さえ合わせておけば、医療費通知や万が一の
患者調査も心配いらないという理由が多いようだ。
まあ普通に考えたら、やりたい放題だろう。
しかし実際にあった例として、大阪の診療所に青森の親類がして来院・受診していたケース。
大阪で受診した事になっていた日に、青森の眼科を受診していた事が確認されたため
架空請求として認定されたという嘘のような本当の話がある(同日に行くには不可能と認められた)。
こうなれば流石に言い逃れはできないだろう。
悪質とみなされても仕方ないケースである。
- 付増請求
これは、実際に行った診療に、行っていない診療を付増して請求することである。
請求月に1日でも診療行為があれば、架空請求ではなく付増請求に区分されるので、
その違いを知っておきたい。
例えば、SRPを1ブロック追加するとか、レジン充填を2窩洞にするとか、どちらかと
言えばセコい請求の仕方と言えるだろう。もちろん、その度合いにもよるが。
ちなみにこれは、月末のレセプトチェックで無意識にしてしまっているケースが多いので、
算定をレセコン任せにしている先生は注意が必要だろう。
- 振替請求
これは、実際に行った診療を、別の診療に振り替えて請求することである。
レジンインレーをメタルインレーで請求したり、銀合金で作ったFMCを金パラで請求したり、といった具合に
こちらもセコいやり方だろう。
しかし、慣れてしまえば大胆な振替をして失敗る先生も多いので、あまり悪さをしないように
注意して頂きたい。
とりわけ、技官時代の印象としては付増と振替請求に関しては、公費負担の患者に多いのも
特徴の一つであった。なんにせよ、明るみになれば当然アウトであるから気を付けて頂きたい。
そして最後は、以前のコラムでも指摘した二重請求だ。
特に歯科で問題とされている不正請求は、付増請求と二重請求であるため、
次コラムにてさらに掘り下げたいと思う。