保険算定部

歯科医療(その2)ナンバー3

医療機関間の連携に関する資料となります。

歯科保健医療ビジョンの再掲となります。歯科においては歯科診療所や障害者歯科医療等を多く実施している、いわゆる口腔保健センターや病院歯科との連携のほか、医科の医療機関や介護保険施設等との連携が重要となっております。

医科歯科連携の1つの例として、歯科を標榜していない病院の患者に、あとにずらすことができないような疼痛や炎症を伴う口腔疾患が生じた場合など、医科歯科連携の中で歯科医療が提供される必要があり、例えば、新型コロナウイルス感染者の患者の場合であっても、歯科医療が提供できる体制を構築しておくことが必要となっています。

これまでの障害者歯科医療に関する診療報酬上の評価の変遷を示したものです。名称の変更において、心身障害者加算→障害者加算→歯科診療特別対応加算へと変わっていったことは、時代の流れによるものであると考えます。
著しく歯科診療が困難な障害者について
・脳性麻痺等で身体の不随運動や緊張が強く体幹の得られない状態
・知的発達障害により開口保持が出来ない状態や治療の目的が理解できずに治療に協力得られない状態
・重症の喘息患者で頻繁に治療の中断が必要な状態
・これらに準ずる状態
に加えて、平成24年には、加算の対象者である、著しく歯科診療が困難な者の例示として、「日常生活に支障を来たすような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ、歯科診療に際して家族等の援助を必要とする状態」を明確化されました。対象は、小児はもちろんのこと、成人、高齢者、在宅患者でも適応を満たせば、特導、マル特の算定は可能です。

障害者に対する歯科医療において、障害の程度や処置の内容等に応じて、歯科診療所や障害者歯科医療を多く行っている、先ほども出ました、いわゆる口腔保健センターなどの歯科診療所、病院歯科との連携の状況と評価を整理したものです。
詳しい算定に対して、以下に示します。
① B009 診療情報提供料(Ⅰ) 注6に係る加算 100点
[対象施設]歯科診療特別対応連携加算(以下、歯特連)の届出を行っていない保険医療機関
[算定要件]歯科診療特別対応加算又は歯科訪問診療料を算定している患者について、歯特連又は地域歯科診療支援病院歯科初診料(病初診)の届出歯科医療機関等に紹介を行った場合に加算
② B009 診療情報提供料(Ⅰ) 注7に係る加算 100点
[対象施設]歯特連又は病初診の届出を行っている保険医療機関
[算定要件]歯科診療特別対応加算を算定している患者について、歯特連の届出を行っていない保険医療機関対して患者の紹介を行った場合に加算
③ A000 初診料 注10 歯科診療特別対応連携加算 100点
[対象施設]歯特連又は病初診の届出を行っている保険医療機関
[算定要件]他の診療所において歯科診療特別対応加算を算定した患者に対して、文書による診療情報提供を受けて、外来で初診を行った場合に加算
④ A000 初診料 注11 歯科診療特別対応地域支援加算 100点
[対象施設]歯特連の届出を行っていない保険医療機関(診療所に限る)
[算定要件]歯特連の届出を行っている保険医療機関において歯科診療特別対応加算を算定した患者に対して、文書による診療情報提供を受け、外来で初診を行った場合に加算

歯科診療特別対応連携加算の施設基準を示しております。この中で(3)の要件は「医科診療を担当する他の保険医療機関」に限定したものというふうになっています。令和2年時点での歯特連の施設基準の届け出数は836医院ととても少ないです。その施設基準の内容を以下に示します。
(1)次のいずれかに該当すること。
イ 歯科点数表の地域歯科診療支援病院歯科初診料に係る施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関であること。
→病院でないと無理
ロ 歯科医療を担当する診療所である保険医療機関であり、かつ、当該保険医療機関における歯科点数表の初診料の注6又は再診料の注4に規定する加算を算定した外来患者の月平均患者数が十人以上であること。
→特導とマル特の算定した人数が月平均10人です。延べ人数ではないですので、かなりハードルが厳しいです。届け出前3ヶ月間の平均になります。計算方法は暦月でOKです。
(2)歯科診療で特別な対応が必要である患者にとって安心で安全な歯科医療の提供を行うにつき十分な機器等を有していること。
→これはいけます。
(3)緊急時に円滑な対応ができるよう医科診療を担当する他の保険医療機関(病院に限る。)との連携体制(歯科診療及び歯科診療以外の診療を併せて行う病院である保険医療機関にあっては、当該保険医療機関の医科診療科との連携体制)が整備されていること。
これも、いけます。

いわゆる口腔保健センターの連携先の状況です。
口腔保健センターが連携する施設としては、地域歯科診療所が90.1%で最も多く、次いで、高次医療機関(大学病院の歯科等)が73.6%、高次医療機関(医科病院等)が65.9%の順でありました。障害(児)者入所福祉施設は63.7%でありました。

障害者の歯科治療における病院歯科と地域の歯科診療所等との役割分担や連携の状況を示しております。
障害者の歯科治療における地域の歯科診療所や歯科医師会との役割分担、連携について、行っていると回答した歯科標榜のある病院は、48.6%でありました。
→半数が行っており、半数が行っていないという結果です。その行っていない半数は、口腔外科を専門としているからかもしれません。私も市中病院の医長だったときには障害者の歯科治療は行っていませんでした。
役割分担、連携を行っている場合の内容としては、回答の多かった順に、「診療内容によらず、地域の歯科診療所からの紹介患者の受入」(79.2%)、「主に口腔外科処置が必要な患者の受入」(73.6%)、「静脈内鎮静、全身麻酔又は入院による歯科治療が必要な患者の受入」(66.7%)でありました。
→全麻での歯科治療は、大学病院の麻酔科に所属していたときには確かにありましたが、市中病院勤務時には、依頼もなかったですね。送られても口腔外科時代は歯科治療は全くしたことがなかったですので、逆に親知らずの抜歯よりもてこずったと思います。全麻での歯科治療は恐ろしく長かった思い出があります。麻酔科としては面白味は感じられませんでした。けど、それが本当は患者さんにとっては一番なのでが。

HIV感染症における口腔症状をまとめたものです。下にある歯科疾患管理料の総合医療管理加算は、歯科治療を行うにあたり、医科の担当医からり患者の全身状態や服薬状況等について必要な診療情報の提供を受けて総合医療管理を行うというものですが、HIV感染症は対象疾患とはなっていません。
HIV感染症ではCD4リンパ球数が減少し、口腔症状(口腔カンジダ症等)が発現する場合があります。また、 抗HIV薬の使用に伴い口腔乾燥症を伴う場合があります。そして、 HIV感染者の包括的な治療をより効果的にするため、患者の主治医との密な連携が必要です。
→今後、総医の要件に盛り込まれるかもしれません。もちろん、合わせて在歯総医にも入るかもしれません。記載はないですので、医管や在歯管には盛り込まれないでしょう。本来でしたら、ワンセットにしてもらいたいものです。

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