口腔機能低下症に対する咀嚼能力検査の算定は理解していても、もう一つのグルコセンサーの活用法である有床義歯咀嚼機能検査の算定がいまいちわからないという声を時々聞きます。
今回はその中でも、有床義歯咀嚼機能検査1のロについて説明いたします。
咀嚼能力検査と有床義歯咀嚼機能検査は同じグルコセンサーを使用するのですが、目的が違います。それぞれの検査の目的を理解した上で算定するとより質の高い療養の給付が行えると思います。
咀嚼能力検査は口腔機能に対する評価を、有床義歯咀嚼機能検査は義歯に対する評価をします。義歯の評価とは、作製した義歯がちゃんと咬めて使えるかの評価になり、必ずしも口腔機能低下症のときのように低数値にならないと基準を満たさない等の制限はありません。
今回この若干分かりづらいという有床義歯咀嚼機能検査1のロについて解説していきたいと思います。頭の中で整理されれば欠損状態を見るだけで適応か否かが理解できます。ただ単に義歯を作製するだけでなく義歯の機能の面でも管理していくとよいでしょう。
実際、食事中に義歯を使用するところを見ることはあまりないですので、グミを目の前で噛んでもらうことは有益な経験にもなると考えます。器用に噛んでいるところを外来で見れたときの感動はなかなかのものです。
義歯作製時における有床義歯咀嚼機能検査では、年齢による制限はございません。適応となる欠損かどうかだけです。口腔機能低下症は50歳以上と年齢縛りがあります。しかし、有床義歯咀嚼機能検査は50歳未満でも適応欠損でしたら算定が可能です。今回、これを期に苦手意識がある先生は克服してみましょう。
さてまずは、適応欠損についてですが
①総義歯
②歯リハ困難の適応となる9歯以上の欠損
③左右第二大臼歯を含む臼歯4歯以上の欠損
が、臨床でよく遭遇する適応欠損となります。
総義歯や多数歯欠損では有床義歯咀嚼機能検査のことを思い出しやすいですが、左右第二大臼歯を含む欠損では、義歯作製時に意外と忘れがちだと思います。ここを注視して義歯作製に望めば増点にも繋がります。
有床義歯咀嚼機能検査には前と後があります。
有床義歯咀嚼機能検査(前)は印象、バイト、試適のいづれかのときに併算定します。どの段階で算定してもOKです。
有床義歯咀嚼機能検査(後)は義歯装着時のみに算定します。
有床義歯咀嚼機能検査(後)は装着月を起算して6か月まで月に一回に限り算定できます。イメージでは歯リハ1算定時に併算定することが多いと考えます。勿論、実日数が2日以上あるときには歯リハ1と異日に算定してもかまいません。
ちなみに義歯の再製作は6か月を超えてというルールがありますが、その6か月というのは義歯印象から起算してという意味になります。
義歯作製時に有床義歯咀嚼機能検査を算定し、装着時を起算して6か月以上軽快後、再度やむを得ず同義歯を再製作する場合に実態に則り、必要に応じて有床義歯咀嚼機能検査を算定することはルール上可能ではあります。
50歳以上の患者さんで口腔機能低下症が義歯作製より前月に疑われ咀嚼機能検査を算定し低下を認め、日本歯科医学会の口腔機能低下症の診断を満たした場合には、同月より口腔機能管理料の算定が可能となります。
そして、その前月に実施した咀嚼機能検査の結果を次月の義歯作製時に有床義歯咀嚼機能検査(前)としてみなすことも可能です。また、再度、有床義歯咀嚼機能検査(前)を新たに実施し算定することも可能です。実態に則り算定していただければと思います。
苦手意識を解消して必要に応じて療養の給付による算定をしていきたいものです。