C先生がキレながらビールをイッキ飲みする。ザルとはこの事か、しかし一体どれだけ呑んだら気が済むんや。
同じく、A先生もキレている。
『全く、どうしようもないヤツらやで。』
しかし同時に、満足したような顔に見えなくもない。
「どう落とし前付けさせたんですか?」
『あの下っ端じゃ埒が明かんからな、店長を呼び出したんや。』
「単なるチンピラじゃないっすか。」
『どこの誰がチンピラじゃ、おぅ?こういう時は、責任者の出番やないか。』
「まあ、あれだけ暴れ回ったんですからしゃーないですやん。ちょうど良いタイミングですし、もうお開きにしましょ。」
≪アホか、まだまだこれからやないか。それにな、こっちには何の落ち度もない。むしろ不快指数MAXの中狂喜乱舞させられとったんや。店長の責任問題やで?≫
「もし診療所にこういうクレーマーが来たら、自分の運の悪さを呪うしかないですよね。」
『誰がクレーマーや、由緒正しきカスタマーセンターや。』
「ちょっと何言ってるか分かんないです。てか、ただの自作自演じゃないっすか。乙。」
『じゃかーしわ、とにかく・・・』
A先生が次の言葉を発しようとしたその時、どうやらここの店長らしき男性がやつれた顔をして入室してきた。
クレームを真に受けるとこういう姿になってしまうのか・・・クレーマー対策の一つとして、話をじっくり最後まで聞く事が第一歩やって言うけどな。ちゃんと相手は選ばなアカンで。
と、どうやら部屋を移動するみたいや。店側が根負けしました、て感じや。
『初めからそこへ案内せんか~い!』
A先生がすっげー嫌なヤツになっている。ただイキリ倒すだけしか能がない、中坊のようだ。とりあえず、少し距離を置いて行動しよう。
そんな事を思いながら辿り着いた部屋を見ると・・・どうやら、その店で一番広いVIPルームのようだ。
棚からぼた餅とはこの事か。部屋の広さを視認するだけで確かに快適や。
全ての元凶であるエアコンの効き具合はというと・・・
なんか、南極観測隊の気分になってきた。キンキンに冷えている。
店長、グッジョブや。
「さすが、ヤカっただけの事はありますね。おかげ様で快適過ぎるくらいです。しかしここの店長も、エラい貧乏くじ引かされましたね。」
A先生に話しかけた。
『どあほ、当たり前の落としお前や。こんくらいで済むなんて俺達、優しいモンやで?』
「この店長が、先生とこに患者として現れたらオモロいんっすけどねー。」
『確かに可能性はゼロじゃない。しかし、そんな事で動じる俺じゃないで。』
そう言いつつも、いつの間にか所持していたビールジョッキを持つ手が震えている。
「体は正直ですね。何か、ヤンキーの腰巾着みたいじゃないっすか。」
『誰がや、俺も大学入るまではワルやったんや。』
わざわざそっち系の武勇伝を語ってくる人間は、だいたい7割引きで話を聞くと丁度エエ塩梅になる。
そんな事を考えていると・・・