ある開業医の話

【院長への道 ep.15 〜開業戦線異常なし】スタッフ募集!

京都の先生の所で半年間のバイトを終え、いよいよ開業まで、残すところ1ヶ月を切った。

 この時期になると、そろそろスタッフの募集をかけないといけない。本来ならもう少し早めに募集したいところだが、あまり早めに採用しても実際の開業日までの期間がありすぎると、当然ながらその間は仕事が無くてもお給料を支払わなければならない。

 仕事がないのに給料が発生するので、賃貸の【から家賃】と一緒で、なるべくこの【から給料】が発生する期間を短くしたい。

 かと言って、あまりにもギリギリ過ぎると、仕事を覚える時間が全く取れないため、開業当日よりも少し余裕を持ち、ある程度前もって採用をしたいところである。

 私は給与計算を、毎月20日〆の25日払いと決めていたので、開業前月の21日から採用することにした。翌月の1日オープンなので、10日間(実質は勤務日7日間)も有れば十分シミュレーションと、ロールプレイができるだろうと考えたのだ。

 現在なら、スタッフ募集の媒体としては、guppyindeedなどのネット媒体が主流だと思うが、この当時はアイデム等の新聞の折り込み広告や、コンビニに置いてあるタウンワークなどのバイト情報誌といった紙媒体が主流であった。

 アイデムとタウンワークの営業の人に来てもらい、広告内容と部数、そして広告を入れる日を決めた。

 まず新聞折り込みのチラシは圧倒的に日曜日に見られる確率が高いとのことで、日曜日にチラシを入れてもらう事にした。また、チラシを入れるエリアの範囲によって値段が違い、自分の医院を中心とした近隣の市町村までエリアを広げて配布して貰った。値段は確か数万円だったと思う。

 タウンワークは2週間くらいの単位で広告を出せたので、採用予定日の直前の号に載せてもらうことにした。

 どちらも写真付きの方が反応が良いと言うことで、医院の写真を載せることにして、新規オープニングスタッフという点を強調してもらった。オープニングスタッフというだけで、通常よりも反応が良いそうである。

 確かに人間関係が出来上がっている所にあとから1人で入っていくのには相当勇気がいるが、新規オープンならスタートラインはみんな同じだし、イジワルなお局もいないので募集が増えそうなのはわかる。

 当社の予定としてはユニット2台で診療するので、スタッフの必要人数としては、前勤務先からついてきてくれた歯科助手の松ちゃん以外に、歯科衛生士1人、受付1人が必要だろうという事で、合計2名を募集することにした。

 結果は、やはり【オープニングスタッフ募集】のワード効果は高く、20名ほどの応募があった。

 しかしながら、夜9時まで診療というのが大きなネックとなり残念ながら歯科衛生士の応募は1人もいなかった。

 またこの時、歯科業界の経験者を雇うか未経験者を雇うかで悩む所だが、今回は未経験者を採用する事にした。他院で変な色がついたスタッフよりも、一から自分の医院のやり方を覚えてくれる真っ白いキャンバスのようなスタッフを採用して、じっくり育てた方が良いと考えたからだ。

 面接の結果、家の近さと面接時の受け答えなどから3名の受付、助手のスタッフを雇用することにした。

 当初の予定より1人増えたが、松ちゃん以外全員歯科業界未経験者だったため、スタッフが育つまでは質より量!という感じで、甲乙付け難かった3人を一緒に雇うことにした。

 今考えれば、ものすごいどんぶり勘定で、しかも行き当たりばったりである。この時は人を1人雇用するという事がいかに大変かという事を、自分自身、全くわかっていなかったのだった。

兎にも角にも、こうして院長の私、歯科助手の松ちゃん、同じく歯科助手のノナカさん、ハセベさん、そして受付のムラナカさんの5人で新しい診療所をスタートして行くことになった。

 松ちゃんとノナカさん、ハセベさんは3人とも20代前半、ムラナカさんは私より少し年上の30代半ばで、皆んな自転車で5分圏内に住んでいた。

 開業までの10日間で、100円ショップで細かい備品の準備をしたり、歯科の専門用語や、アシストの時の準備や診療補助の仕方などをしっかり勉強する事ができた。

 さあ、いよいよ明日からオープンだ!頑張らなくっちゃね。

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