では、【免許取消し・剥奪の判断方法】についてみていこう。
非行に対してどのような処分を科すかは、厚生労働大臣の裁量で決まる。
ご存知の通り、厚生労働大臣は行政処分の可否を医道審議会に通して諮問することから、その答申次弟となるで。
ちなみに『医道審議会』をざっくり説明すると、
・厚生労働省の審議会等の一つである。
・30人以内の委員により構成されるもので、必要に応じ、臨時委員、専門委員を置く事ができる。
・ちなみに委員及び臨時委員は、日本医師会会長、日本歯科医師会会長、学識経験者の中から、専門委員は、該当する専門事項の学識経験者の中から、それぞれ厚生労働大臣が任命する。
・医師・歯科医師(医道分科会による)、薬剤師(薬剤師分科会による)、保健師・看護師(保健師助産師看護師分科会看護倫理分部会による)、理学療法士・作業療法士(理学療法士作業療法士倫理部会による)の免許取消し・停止などの行政処分とその手続きを行う。
と、いったものである。
そして医道審議会医道分科会は、行政処分の目安として2002年12月31日付「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について(2015年9月改正)」を公表しており、これが参考となる。
*ちなみに分科会とは、「大きな会議などで、その会議で取り上げられた事項に応じて、分野ごとに専門的に研究・討議を行う小会議」の事である。
これによると、行政処分の基本的な考え方は次のとおりである。
・「医師、歯科医師免許の取消し又は業務の停止の決定については、基本的にはその事案の重大性、医師・歯科医師として求められる倫理上の観点や国民に与える影響等に応じて、個別に判断されるべきもの」
・「処分内容の決定に当たっては、司法における行政処分の量刑や刑の執行が猶予されたか否かといった判決内容を参考にする事を基本とし、その上で、医師・歯科医師に求められる倫理に反する行為と判断される場合は、これを考慮して厳しく判断する」
つまりは、
(1)非行事案ごとの個別判断である。
(2)刑事処分の内容を参考とする事を基本とし、
(3)特に医師に要求される倫理の違反には厳しく対応する。
という事である。
前コラムで触れた道路交通法に当てはめると、例えば<スピード違反=速度超過違反>の場合。
制限速度80㎞/hの道路を50㎞/hオーバーで捕まったドライバーと、100㎞/hオーバーで捕まったドライバーとでは、扱いが違うという事だ。
そして飲酒運転の場合。
飲酒しただけ(その量にもよるが)の状況と、飲酒+人身事故等では、扱いが違うという事だ。
その他の事案も、言わずもがな。
日頃ニュースを見ていて、同じように感じる刑事罰を受けた者の間でもその行政処分に差があるのは、こういった諸々の事情があるんやな。