<よっしゃ、須藤先生。君がこの娘を運ぶんや。>
「え?」
いきなり右ストレートを挿入された気分になった。有無を言わさず、て感じや。
「ちょっと待って下さい、何で僕なんですか?」
C先生のところにも、勤務医はいる。何でオレやねん、そもそもオレにとっては、他所のスタッフやんけ。
<さっきカラオケで、楽しそうにデュエットしとったやないか。だから、運命共同体や。>
う~ん、マンダム・・・
いや、ちゃう。
「いえ、そういう問題ではなく。C先生とこのスタッフなんですから、そこで始末付けるのが筋ってモンでしょ。」
<罰当たりな事言うな。同僚がそれをして、ある事ない事言われたら大変や。だから、部外者の須藤が行くべきやろ。>
「そんなんただの建前じゃないですか。エエように利用しようとしてるのが丸見えですよ?」
<なんちゅう事言うんや。これが一番丸く収まる方法や。>
・・・どこが親睦を図る、や。しらこくて泣けてくるで。
他の鉄砲玉からの憐みに満ちた視線を感じる。貧乏くじばっか引かされるヤツやな~、という視線が突き刺さる。
しかしこれが重要なタスクである事に変わりはない。これ以上、愛子さまをこのまま放置しておく訳にはいかないからだ。
その前に、まずは眠りから解放せなアカン。
耳元でささやく。しかし、全然起きへん。仕方ない。優しくフェザー往復ビンタしたるか。
フェザーって付けたら、何やっても許される訳ではないが。
しかし、それは杞憂に終わった。さっきのウィスパーボイスで、目覚めてくれたからだ。
眠り姫の寝起きのご機嫌は・・・
{う~~~ん、頭が痛い・・・}
どうやら最悪なようだ。
そらそやな、十分に寝ても呑み過ぎの二日酔いは辛いもんや。無理矢理起こされたら、なおさら気分は地獄やで。
しかしそれにしても、オレに対して積年の恨みでもあるかのような目で睨んできた。
貧乏くじを引かされた上にババまで引かされている自分が、情けなくなってきた。
他の鉄砲玉は、内心めっちゃ笑ってそうな真顔で、同情したフリをしてしる。
家なき子のように。
ここまで来ると、被害妄想もパンケーキみたいに膨らんでくるで。
そんなオレの気苦労をよそに、院長連中は部屋から出て次の店に行こうとしている。
管理者としての責任感、てモンが無いんか。
月に代わって、個別指導でお仕置きよ!
・・・しかしそれにしても、一歩間違うと大問題になりそうや。もしかして全ての罪を擦り付けられるんちゃか?
お人好しもたいがいにしとかんと、その善意で自分の身を滅ぼしてしまうで。
と、今さらながらに自戒した。