仕事上がりのビールと焼き鳥って、なんでこんなに美味いんや。疲労困憊の五臓六腑に沁み渡り、太平洋を駆け抜ける気分やで。
犯罪的だっ・・・!うますぎるっ・・・!
思わず地下強制労働施設での、カイジの気持ちが乗り移ったような気がした。
あと2本は、もう少し焦らしてから頼むとするか。
・・・いつ頼むねん、おぉ?という女性店員の顔が、さらに焦らしプレーを加速させる。
という事で、鶏レバーを注文する事とした。ごま油を混入したタレが、さらに食欲を増進するんや。
「さあ、やっと話の続きやな。」
<せやな~。>
「こら、何エエ感じに出来上がっとんねん。今日こそ本丸を洗いざらい話してもらうで。」
<は~い。>
ピッチが速い。ここで日本酒入れたら、フィニッシュしそうな勢いになってきた。
「で、大学病院に送ってからどうなったんや?」
<前にも言ったけど、3カ月は粘ったんやで?>
「引っ張るだけ引っ張って、リリースしただけやろ?」
<そう、リリースしたはずやったんや・・・>
さっきまでの陽気なノリはどこ吹く風や。酔いが一気に冷めたような雰囲気を醸し出している。
「現在進行形で、リリースできてへんのやな?」
<前も言ったやないか。だから、相談しとるんやないかい。>
その割に、先日はスッキリした顔してスケアポ遂行しとったやないかい。
「で、リリースしきれてへんってのは、具体的にどんな感じなんや?」
<とりあえず紹介状渡して大学病院に行ってもらった。そこで終わりと思ったんやけど・・・>
「けど?」
<そこの先生に、下歯槽神経麻痺について具体的な説明を受けたみたいでな。>
「で、どういう事やコラァ!て塩梅か?」
<そういう塩梅や。そもそも起こり得る可能性はゼロではなかった事を伝えて、実際の手術時の手技や段取りを説明しようとしたけど・・・>
「そんなもん、聞く耳持てへんのちゃうんか?」
<その通りや。俺のインフォームドはどうでもエエ、て。>
「そら、コンセントは得られへんわな。」
<当然、ラポールも確立できへん。>
「それは、手術前にせなアカン話やろ。」
<せや。手術はきっちりしただけに・・・>
「言ってる事がこないだと違うやないか。イージーやからチャラ見したんやろ?」
<こんな事になるとは思わへんかったんや・・・>
「自分を過信したのが間違いの元やな。」
<過信ちゃうわ、油断や!>
「まあどっちでもエエんやけどな、それこそそんなくだらん事言ってる場合じゃないんとちゃうか?」
<・・・>
自分の腕に自信を持つのは大切なことやけどな。
トラブルを起こした段階でも、まだ懲りずに上から目線で講釈たれられたら、治まるモンも治まらんやろ。
目の前の野崎を見て、改めて再確認した。