悪夢の院内運動会

悪夢の打ち上げ㉝

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その医院は3階にある。

 

上を見上げても、中の様子を窺い知ることは出来ない。一体全体、どういう展開になっとるんや?

 

 

ざわ・・・ざわ・・・ カイジみたいな淀んだ空気が窓から漏れ出ているように感じる。

 

 

こういう時は、得てして悪いイメージしか湧かないモンや。それを打ち消すために、イメージトレーニングを試みた。

 

イメージトレーニングとは、そもそも上手くいくための流れをイメージするものだ。

 

 

・・・しかし、いまいち良い絵が浮かばない。やはり、仕事上がりは頭の回転が悪くなるで。

 

 

そんな事を考えているうちに、

 

 

 

<よっしゃ、須藤。行くで。>

 

 

院長の号令が出た。

 

 

「ち、ちっくと待ってつかあさい!」

 

思わず坂本龍馬の叫びが出てしもた。

 

 

坂本さんのそれとは比べ物にならないプレッシャーの軽さを想像して、幾分かは気持ちが和らいできた。

 

 

しかし、幕末の志士たちはどんなプレッシャーの中で毎日生きとったんや?そら、頭の一つや二つおかしくならんとやってられへんかったやろ。

 

 

そういえばお悩み解決の定番策の一つに、「宇宙の事を考えろ」てのがあるな。宇宙のスケールに比べれば、今の自分の悩みなんか鼻クソみたいなもんやって。

 

 

宇宙・・・あまりのスケールに、想像が追いつかない。どうやら宇宙を比較対象に持ってくるためには、物理学の知識が必要なようだ。

 

学生時代、最も苦手で逃げ出したかった物理の勉強を思い出した。

 

 

・・・アカン、余計な脂汗が出てきてしもたで。

 

 

 

やはり、オレにとって悩みの一番の解決策は、目の前の事象に全リソースを突っ込む事や。

 

 

ウスターソースじゃないで?とんかつソースでもないで?

 

 

知識、技術、時間・・・そういった要素の事や。

 

 

そんなこんなで階段を上がり、医院の目の前に到着した。

 

 

ドアを引く手が高級レストランの重厚なドアのように重たく感じるだろう、とイメージしたところ、独りでに横にスライドした。

 

 

自動ドアかい。

 

 

 

ここへ来て、ドラえもんのどこでもドアで逃げ出したくなってきたで。

 

 

そういえば【空想科学読本】で、現実にタケコプタ―を付けて空を飛んだらどうなるかを、科学的に解明していた事があったな。

 

 

 

その結果は・・・タケコプターの遠心力や回転力でかは知らんけど、のび太くんの首から上が吹っ飛んでタケコプターと一緒にグルグル回って空に飛んでいく、て答えが出てたわ。

 

 

なんちゅう恐ろしいもん開発するんや、藤子・F・不二雄先生。

 

 

 

じゃあ通り抜けフープは、輪っかをくぐった瞬間にジャイアンの体が吹っ飛ぶんか?

 

 

アカン。オレの物理の知識では、想像すらできへん話やで。

 

 

 

そんなどうでもいい現実逃避をしていると、院長がいきなりオレの首根っこを掴んで引っ張り回してきた。

 

 

・・・す、すごい遠心力やで。オレの首が吹っ飛ぶがな。

 

 

そんなこんなで、戦闘態勢を整えるウォーミングアップは完了や。

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