「失礼します!」
ヨネスケみたいに、威勢良く入室した。
するとそこには、ご両親と共に愛子さまもおる。
お前もおるんかい。不意打ちを食らった感じや。つまりは3対3、同数での懇談か。
てか、愛子さまがおるんやったら、オレの身の潔白は証明されたようなモンやろ。
〔あなたが、例の須藤先生ですか・・・〕
父親らしき男性が開口一番、訊ねてきた。口ヒゲをたくわえている。秋篠宮殿下・・・いや、スーパーマリオみたいなオッサンや。
「はい、私が例の須藤と申します。」
するとマリオが、
〔娘が大変お世話になりまして。この度は、ありがとうございました。〕
めっちゃ角が立っている。どうやら、かなりオカンムリのようやな。
「いえ、こちらこそ大変お世話になりまして。」
とりあえず、火に油を注いでみた・・・いや、どうやらガソリンを注いでしまったようだ。
〔何がお世話になりました、だ!私達の大事な娘を・・・〕
おい、どんなフィクションになっとんねん。
[あなた、落ち着いて下さい。まだ話は始まったばかりなんですから。]
横に座っている奥様が、ツッコミを入れる。この落ち着いた感じ、どうやら今日のボスはこっちのようだ。
ちなみに、奥様は紀子さま・・・親子関係がテレコになっとるやないか。まさしくクールビューティーといった装いだ。まるでクリボーのような髪型をしている。
しかしこの一連の流れ、マリオがキレてクリボーがフォローする連携の良さが、この面談に対する周到な準備を感じさせる。
個別指導も真っ青やで。
しかもこれは、確実にフィニッシュまで計算しているパターンや。厄介な事この上なしやで。
するとマリオが、
〔当日の事を包み隠さず教えて頂こうか。〕
と訊ねてきた。
何を上から目線でシバきにかかっとんねん。横のクリボーぶつけてちっちゃくしたろか。
「お嬢様からどこまで聞かれていますでしょうか?」
〔お嬢様だと・・・?〕
オレの紳士的な質問に、一瞬たじろいだのを確認した。
「ですから、どこまでお聞きですか?お父さん。」
〔貴様にお父さんと呼ばれる筋合いはない!〕
結婚の申し込みちゃうんや。てか、貴様ってなんやねん。
どうやらこのマリオとは、建設的な話が成立しないようだ。いちいちキレてこないようにバランスを取りながら、クリボーを攻めていくとするか。
家や車などの高額品を夫婦で買いに来たお客様に対しては、旦那ではなく嫁を攻めろとはよく言うが、気分はそんなところや。
「今回の合同院内運動会は、企画は各院長先生が、幹事は私がさせて頂いた次第です。」
「ですので、運動会中は主に司会進行を賜っておりまして、他院のスタッフさんとは一言も話す時間がございませんでした次第です。」
我ながら、よくできた棒読みや。
こういう時は役が憑依する俳優、いや、しょーもない話をめちゃくちゃ面白い話へと昇華させる芸人になりたくなる。
しかし、まだオレにはそんなスペックはない。とにかく、この理不尽な空間から早く逃げ出さなアカンで。