悪夢の院内運動会

悪夢の打ち上げ㉟

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〔まずは、なぜ娘がそこまで酔う必要があったのか聞かせて頂きましょうか。〕

 

 

酔う必要って。勝手に酔っ払っとっただけやないか。

 

 

「先程も申し上げましたとおり、運動会中の娘さんの動向は全く把握しておりません。そちらに関しては、C先生とお話して頂けますか?」

 

〔ほうでっか・・・〕

 

 

萬田銀次郎みたいな喋り方すな。

 

 

「いかがでしたか?C先生。」

 

 

話を振ったところ、C先生が眉をひそめた。何を俺に振っとるんじゃい、というようなオーラを醸し出しているがそんな事は知ったこっちゃない。

 

 

≪運動会中は、皆で和気あいあいと楽しんでいたと思います。もちろん、お酒を呑みながらなどという事は、一切ございませんでした。≫

 

〔そうなのか?〕

 

 

今度は、マリオが愛子さまに振る。

 

小さくうなずいた。基本姿勢は、俯いたままだ。なかなかの策士やないか。

 

 

〔まあ、娘が楽しかったかどうかは院長先生の決める事ではないですけどね。〕

 

いちいちトゲのある言い方や、随所にガマン汁がほとばしっている。

 

 

≪えぇ、まぁ・・・≫

 

 

C先生の額に汗が光ってきた。体温が5℃は上昇しとるな。

 

 

知らんけど。

 

 

 

〔そもそも今回の合同・・・何でしたっけ?〕

 

≪院内運動会です。≫

 

 

分かりきっているフレーズをわざと知らないフリして聞くところが、マリオが粘着質である事を如実に表している。

 

こういう時は、得てして小馬鹿にしてくるのも教科書通りのノリや。性格の悪さはハンマーブロスやで。

 

 

それを感じてか、C先生の返答にも幾ばくかの怒気が感じられる。エエぞ、その調子や。

 

 

〔そんな事を、わざわざ一日使ってまで行う必要があったんですか?〕

 

≪何も休日に挙行した訳ではありません。きちんと休診して、出勤扱いで行った次第です。≫

 

〔いや。だから~、そもそも運動会なんて、歯科医院で行う必要はあったのか?て事だよ。〕

 

 

どうやらこのマリオ、かなりの煽り体質のようだ。

 

 

<皆のチームワークを強固にし、より風通しの良い診療環境を作るためです!>

 

横から院長がしゃしゃり出てきた。火に油を注ぐのではない。率先して竹ヤリ持って機関銃に特攻かますところが、院長の頼もしいところや。

 

 

体育会系の先輩方も、これくらいの兄貴分で済ませといてくれたらエエんやけどな。

 

まあそれは、虫のエエ話か。

 

 

マリオは一瞬怯んだ姿を見せたものの、すぐに平静を取り戻したようだ。

 

 

〔でも、スタッフ一人泣かせてるじゃないか。それでもチームワークが上がったというのかね?サイレントマイノリティは、切り捨てるのがあなた達のやり方ですか?〕

 

 

政治家にいちゃもん付けてるみたいや。まさかプロ市民ってヤツか?

 

何にせよ、今のうちに逃げ道を作っとかなアカンで。

 

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