<ですから、お酒の強要はしておりません!>
≪運動会から打ち上げに至るまで、本当に和気あいあいしていたんです!≫
院長とC先生がタッグを組んでマリオと言い争っている。
キン肉マンの黄金タッグトーナメントに出場していた、モースト・デンジャラスコンビみたいや。
さすがのマリオも気圧されている。
どっちにしろ、これでオレはお役御免ちゃうか。そう都合よく解釈し、中座して部屋を出ようとしたところ・・・
[須藤先生、どちらへ行かれるんですか?]
それまで高みの見物を決め込んでいたクリボーが、ドスの効いた声で問いただしてきた。
何か、極道の妻みたいやで。
「何かボク、もう必要ナイカトオモイマシテ・・・」
カタコトの日本語でアンサーしておいた。
[アホンダラァ!娘と先生がデュエットしてからおかしくなったんでしょうが!!]
こちらはカタコトの関西弁や。岩下志麻やないか。ラストに田中邦衛もちょっと入っとる。
<おい、須藤!何帰ろうとしとんねん!>
≪お前のせいで、ややこしい話になっとるんやろがい!≫
クリボーに加勢してどうすんねん。思いっきり裏切られた気分やで。
仕方ないので、諦めて着席した。
「誰が好んでデュエットしたと?こちらの院長先生に押し付けられただけです。罰ゲームとして。」
院長が唖然としている。全く事実をそのまま述べただけやけどな。しかし、何か罪を擦り付けてるような気持ちになってきた。
・・・いや、その優しさが自分の首を絞める事になるんや。事実を事実として紛う事なく伝えないと、理不尽な罪人になるのはこっちやで。
〔罰ゲームだと・・・?うちの娘に向かって言ってるのか?〕
「他にどなたがおられるんですか?」
マリオが怒りで大きくなってきた。まるでキノコを食べたかのように。
[一体、どういうことですの?人の娘を罰ゲームって・・・どういう教育をなさってるんですか?]
クリボーが院長に絡みだした。
<いえ、こいつが勝手に言ってる事でありまして・・・>
[勝手に言って良い事と悪い事があるんではないですか?親を前にして、失礼極まりない話だと思うんですが。]
院長がバツの悪そうな顔をしてアンサーしている。こういうお上品なマダムにとっては、ガチの体育会系などは想像もつかないような下品の巣窟だろう。
「いえね、日頃から宴会ではこんなノリなんですよ。」
何も特別なノリではなかった事を伝えたつもりが・・・
[いつもですって?どういう集まりなんですの?]
院長とC先生が余計な事を言うなとばかりに睨みつけてきた。
しかしオレが特別な行動を取った訳ではない事を、知らせる必要がある。
やはり、自分の身は自分で守らんとアカンで。