Column


院長もそれを聞いてちょっとは落ち着いたみたいだ。
この院長は緊張してたせいか、どもったり、怒ったり、たったの2時間の間に感情の起伏が激しかった。
「なあ、重田先生、おれ、どうやった」
「どうって」
「ちゃんと質疑応答できてたか」
今さらこんな質問はどうでもいい。きっとこの院長はナルシストなのだろう。
「あぁ、はじめの方は緊張してたけど、最後のほうは自然体で良かったで」
適当にかえす。
「で、結局、うまくイけそうか」
「あぁ、大丈夫や。心配せんでも経過観察や」
「経過観察って、いつまで経過を観察されるんや」
「いつまでもや」
「え、これからずーっとか」
「あぁ、そや」
「ちょっと待てや、なんやねん、それ」
さっきのパノラマの指摘事項が消化不良なのだろう。いつもは温厚な院長がキレやすくなっている。めんどくさい。
「ワシも聞いたことがあるんや。経過を観察っていつまでですか、いうて」
「じゃあなんて」
「『期間の定めがありません』言うてたわ。いかにも役人らしい答えやろ」
「で、重田先生はどないしたんや」
「どないもこないもあるかいや。どうもせえへんわ」
「キレへんかったんか」
「あほ、一開業医が役人相手にキレてもしゃーないやろ。長いものには巻かれろ、や」
「ただ、日和っただけやないか」
この院長はイラついているのだろう、いちいち返す言葉にトゲがある。
「そうなんですわ。じゃあ院長は日和らんのか」
「おれはな、役人相手に日和って堪るかいや」
よう言うた。この院長、1人では何もできなかったくせに、口だけは一人前だ。
たまに学生時代の同級生にもこういう奴がいた。
陰では一丁前なことを言うくせに目の前にすると黙っとるヤツ。
能力もないくせに偉そうに言うやつはハッタリ野郎だ。
こういう奴をみるとイジメたくてウズウズする。
でも、今回はクライアントでもある。派手にいじめるのはやめよう。
「ほうか。じゃあ、講評のあとに『なにか質問ありますか』って言われるから聞いてみたら」
「え、」
院長が焦る。
「たしかに院長先生のおっしゃる通り、期間の定めがないのはちょっと指導後も不安で仕方ないもんな」
「お、おう」
お、おう。やって。ちょっとイジメすぎたか。
その後、院長が急に沈み込んで黙りこくる。
この院長はイキったり凹んだり忙しい。
「でもまぁ、まだ経過観察と決まったわけやないし、概ね良好やったら聞く必要は無いしな。ムリに聞かんでもエエで」
「いや、おれは聞く。聞かな、帰るに帰られん」
あー、一番面倒臭いタイプだ。
もう放っとこ。

重田 
Twitter @honma_kannin


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