Column


ー「と、いうことですので気を付けてくださいね」
技官はサラッと事務官の指摘を流す。
きっと技官もこの事務官のことが嫌いなのだろう。
ー「では、次行きましょうか」
ー「ちょっと待ってください」
また、あの事務官だ。とことんウザい。
勉強ができるのならもっと空気を読め。
ー「この納品書もおかしいだろ」
おかしいのはアンタの頭だ。若いくせに年配の重鎮に偉そうだ。
たまにこういう事務官がいる。
基本的には事務官には良い人が多いが若いのはお勉強ができるのか、勘違いして偉ぶる奴がいる。
ワシも「お前」呼ばわりされたときはブチ切れそうになったのを覚えている。
普通はブチ切れてもおかしくはないがさすがは重鎮、心が広い。
ー「この納品書だけど、納品日がセット日よりも後になってるけど、どういうことだよ」
しょーもない質問だ。
ー「あぁ、それね。急ぎで出してる場合はモノだけ先に持ってきてもらうこと、あるんだよ。まぁ、ちっちゃい技工所だからそれくらい目つぶってよ」
重鎮が笑いながら答える。
余裕な感じで若い事務官のハネっ返りを受け止めている。
ー「ちゃんと技工所に書いてもらわないとダメだろ」
ー「僕も言ってるんだけどねぇ、まあなんせちっちゃい技工所だからねぇ。あなたからもそないして技工所に注意してあげてよ」
ー「…」
若い事務官は威勢はいいが重鎮先生も年の功で負けていない。
ー「ま、技工所はうちの管轄じゃないし、次行きましょうか」
ー「そうですね、次行っちゃってください」
またサラッと流される。
技官も重鎮先生もこの若い事務官がウザくて仕方ないのだろう。
いつの間にか2人で若い事務官の鼻を折りにかかる。
やはり、人生経験が豊富だとこういう場もうまく乗り切れるのか。
少し重鎮先生を見直した。
ー「あとはね、時間の関係もあるんでまた講評で説明しますけど、お願いしますね」
ー「はい、分かりました」
調子の良い返事で答える。
2人して事務官をイジメている感じなのだろう。
ー「じゃーもう、このまま講評しちゃおうか」
ー「いや、ちょっと待ってください」
ー「うーん時間も時間ですし、あなたが割り込まなければ講評の時間も取れたんだけど、もう難しいよね」
きっとこの技官は自分の指導時間に横から若い事務官が茶々を入れてきたのが気に食わないのだろう。
今回はこの若い事務官がハネてくれたお陰で事務官と技官と身内の喧嘩が勃発し、重鎮先生が助かった、非常にレアなケースとなった。
普段は指導後に講評を取りまとめるため10分くらい指導会場から一旦退出を促されて、その後に講評が始まることが多い。
今回はいきなり講評が始まっている時点で指導結果も見えている。
その後、無事に終了したと重鎮先生からの連絡が来た。



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