Column

「小うるさいこと言われたくなかったら、その大原則に沿って返答してくれへんか」
「分かりましたよ。お役人相手にそのように言いましょうね」
「あぁ、そうしてくれ」
「じゃあ次、カルテは誰が記載しておりますか」
「そら、先生でしょ、もうさぁ、そんなしょーもないこと聞かなくて良いさぁ」
危なげな感じではあるが、大きなミスはない。
初めて受けるわりにはなかなかスジがエエ。
「ほうか、じゃあもうちょっとキツめの質問するで、よろしいか」
「あぁ、なんでもいいさぁ」
「この患者やけどな、初診日が平成31年やけどな、なんで1号カルテの生年月日に令和の“令”が入ってるんや」
「入っていいさぁ、なんでダメさぁ」
「初診時には次の元号が分からなかったはずや、にも関わらずなんで“令”が入ってるんや」
「はぁ、もうそれくらいいいさぁ、なんでダメさぁ」
「これ、カルテの改ざんの明確な証拠になりかねへんで」
「改ざんなんかしてないさぁ」
儀間先生にこれ以上言ったところで埒があかない。
「あのな、あいつらには、そんなもん通用せえへんねん。こんな甘ちゃんのカルテ整理してたら指導以前の問題や。上原さん、ちょっとよろしいか」
「はい」
「令和の令の字はどこにも出てこうへんはずやないんや」
「そうですけど」
「実際に出てきてるやないか」
「すいません、気つけます」
これが本番やったらアウトだ。初めから気を付けろ。
沖縄人は本土の人間と比べるとやる事がユルい。
仕事をしたがらない、すぐに呑みたがる、嫌なことはしない。
それでは指導は乗り切れない。
「脇がユルいんや。アルコール抜け切った状態でシャキッと締まりのあるカルテ、用意してくれへんか」
「頑張ります」
「とりあえず、指導が終わるまでは禁酒にしてくれへんか、いつまでもこんな感じやったらマズイで」
「分かりましたよ。私も肝数値が危ないから指導が終わるまで控えておきましょうねぇ」
この先生は肝数値がヤバいことを承知で酒を飲む。
きっとアル中なのだろう、指導準備中にも酒を飲むに違いない。
「そうしてくれ」
「終わったら勝利の美酒を飲みましょうね」
やっぱりアル中だ。
「終わったあとは好きなだけ飲んだらよろしいわ」
「じゃあメドも立ったことですし、お昼ご飯にしましょうか」
今日はお昼には帰る予定だ。
家族で金武のタコライスを食いに行く約束をしている。
「残念やけど、今日はワシ、これで居ぬわ」
そういって家族の待つホテルに到着したあと、飛行機までのあいだ、金武町に行くことにした。
「そこのタコライス、ホンマに美味しいんやろね」
「あぁ、米軍仕様や」


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