Column

「なにそれ、米軍て」
「米兵が旨い言うて、お持ち帰りもしてるくらいらしいで」
「でも、B級グルメちゃうの」
何かにつけてすぐにB級とか言うな、少しお仕置きが必要だ。
「あ、その前にな、大金は持って行ったらアカン。米軍に恐喝されるかも知れん」
「なにそれ、そんなに危ないところなん」
「そこは日米社交街にある。米軍と少々社交せなならん」
「英語でしゃべらなアカンの」
「あぁ、そうや。だから今日アンタを誘ったんや」
嫁は英語が喋れる。ワシが全くできないのを良いことに見下してくる。
「じゃあ、店員さんもアメリカ人なの」
「いや、日本人やけど、日本語は通じへん。英語だけや」
「ちょっと危険じゃない」
「あほ、美味しいもんは危険を犯す必要がある、いうことや」
「なに言うてるのよ、子どももおる、いうのに。何かあったら守ってくれるんやろね」
「ワシもそれなりにタッパあるけど役者が違う。相手は米兵や」
チラッと見るとちょっとチキンになっている。が、強がって絶対にビビるところは見せない。
「ご飯代のお金は、どうするのよ」
「とりあえず、恐喝されてもバレへんところに隠さなあかんで」
「ポケットはアカンの」
「アカン、アカン。んなところに隠したらチャリチャリ音が出る」
「仕方ないやないの」
「そんな音出して歩いてたら『恐喝してください』言うてるようなもんや」
「じゃあ、どこに隠して持っていくのよ」
「靴の底あたりがイイんちゃうか、知らんけど」
そう言うと、ヨメが両足の靴の中に千円札を数枚入れている。
アホだ。笑いそうになるがここで笑ってはいけない。
マジメな顔をして聞く。
「音、なれへんか」
「小銭は持って行ってへんから大丈夫やで」
神妙な面持ちで言っている。
ここで嘘がバレるとマジギレされそうだ。絶対に笑わないようにしなければ。
金武ICを降りると相変わらず怪しいタトゥ屋があったり、80年代のバカでかいステレオを担いでランニングしている黒人がいたりと日本ではないような街並みである。
「あたし、ちょっと怖いわ。やっぱ辞めへん」
「アホ言え、ここまで来てなに言うとるねん」
「あんなデカい黒人に恐喝されたら、出してしまいそうや」
「どこから出すんや」
自分で言って、笑いそうになる。
「どこって、…」
「な、靴の底から出せるかいや。ああいうマッチョは足が遅いんや。走って逃げるんが1番エエ」
「ホンマに」
「あぁ、ホンマや」
そうこうしているうちに、駐車場に着き、日米社交街に入る。


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