仕事の話をする時にはホテルのラウンジで話すことが多い。
色々なラウンジでお茶をすすったが一番良かったのがリーガロイヤルだ。
昔は難波のスイスホテルをよく利用していたが、最近は婚活のためのラウンジになっている。
婚活というても出会い系アプリで待ち合わせして、一緒にお茶をすする。
まぁ、出会い系アプリを使うくらいの男女やから、そーゆー人らや。
こいつらの話を聞いてると、まるでオモんない。
どーでもエエことをくちゃくちゃ喋りよる。
結婚するかもしれへん同士が肝心なことをさておき、くだらんことを一から十までしゃべり続けよる。
そら、結婚もでけへんわ、と思いながら仕事の話を聞くのでいっこもアタマに入らへん。
だから、ここはやめた。ここはワシではなく、いんちょ山崎の主戦場だろう。知らんけど。
リッツはエエのはエエけど、第二ボタンまで外したキツネとタヌキが絵に描いた餅で話に花を咲かせていることが多い。
腹の出たデブの2人という時点で、大した話やないのやろう。
ホントの金持ちとかホントのグルメはみんな腹は出ていない。
その点、リーガロイヤルは席の間隔が離れているが、店員さんは周りに気を配ってくれとるから必要な時にだけ、パッと来てくれる。
だからワシのお気に入りや。
予定より5分前に行くと、須藤先生が先に来ていた。
この須藤先生は元技官で昔からちょくちょく指導先でバッティングしていた。
初めは仲は良くなかったが、腹割って話していくうちに仕事仲間として情報交換したり、一緒に地方に行く仲になった。
ぱっと見、垢抜けたジェントルマンに見えるが、育ちは大阪の県境の和歌山県紀の川出身である。
にも関わらず、自分は大阪出身のなんちゃってシティーボーイ風を吹かすところが玉に瑕だ。
「スドちゃん、早いな、暇なんか」
「暇やあれへん、今日だって指導の仕事や」
「個別か?」
「いや、新規や」
「なんや、新規か。しょーもない」
ついつい、心の声が出てしまう。
「あのなぁ、新規でもな、不安になっとるセンセ多いんや」
「あーそーか、堪えてや。そんなカッカしやんと冷えたコーヒーでも飲もや」
須藤が怒るとひつこくなる。
技官アガリからなのだろう。めんどくさいから話をそらす。
そうすると須藤が店員に「冷コー」と注文する。
そこらへんがまだ田舎臭さが抜けてない。さすが和歌山出身や。
またいうたら喧嘩になるから言わんけど、一緒にいてたまに恥ずかしい。
そうこうしているうちに、西園寺センセと今回指導に当たったセンセと一緒に来た。
どんなワルやと思ったら、意外にも優しそうな先生である。
「どうも初めまして、栗田と申します」
メガネの痩せ、ちょっとドンくさそうな感じである。
あえて言うなら…。
「のびちゃん、って言ってあげてね。私たちはそーやって言ってるよね。ねっ」
西園寺が察したかのように言うてくる。
たしかにのび太やけど、本人は言われたくなさそうや。
この本人からしたら、西園寺はジャイ子なのだろう。知らんけど。
「のび…、いや、栗田センセ、今日はどこからですのん」
「箕面ですわ、新御堂を北へ上がったドンつきを左に行ったら浄水場あるでしょ。その近くの住宅地からですわ」
箕面とは大阪の高級住宅地が立ち並ぶエリアである。
たしか、上沼恵美子もここらへんの人だったか。
「あー、箕面スパーガーデンがあるところですか」
横から須藤が割って入る。横から入るくせにビミョーに惜しい。
箕面スパーガーデンはなくなり、今は大江戸温泉物語だろ。心の中でツッコむ。
「そーです、そーです。そこらへんですわ」
ちゃんと否定せずにスルーしてあげてるところをみると、きっと育ちのええセンセかもしれへん。
一通り、雑談し、秘密保持契約を交わしたところで、本題に入る。
「で、今日はどないしましたん」
「いや、実は通知が来ましてね。ちょっとヤバいんですわ」
「なにか心当たりは」
「色々あってややこしいんですけどわ」
「で、ワシらの前に業界団体とかに相談されましたか?」
「それができないから来とるんですわ」
なんや、そんなにややこしいんか。
「で、何しましたん」
