打ち上げへ向かう前に多少の自由時間があったため、それぞれが思い思いの過ごし方をしたようだ。
ちなみにオレは打ち上げ会場の近く、心斎橋にある【清水湯】へ行く事とした。やはり汗をかいて疲労が蓄積した体には、風呂が一番効く。これは普遍の真理や。
恐らくこれから朝までコースになるであろう事を想定して、徹底的に体を癒す事にした。
アメリカ村に近い分ファンキーな若者が多いのが当時の特徴だったが、気にせず入浴する。
チョー気持ち良い~!
目一杯運動した後の風呂って何でこんなに気持ちエエんやろ。癒しの気持ちに満たされたところで、体を洗う事とした。
・・・し、しもた。シャンプーとボディーソープを忘れた。もちろん仕上げのリンスも。
この銭湯にはアメニティは一切ない。昔のフォークソングみたいに桶に全部入れて持って行かなアカンのやった。タオルは何とかなるとして・・・
どうしようもない気持ちになっていると、横で頭を洗っていたファンキーな若者が、自分の使用していたアメニティをオレに貸してくれた。苦難の中にこそ、仏はいるもんや。
人は見た目で判断してはいけないという事を、彼のタトゥーまみれの体を見ながら考えた。
タトゥーは禁止というのが銭湯のお約束だが、さすがにこいつに退場宣告はできへんやろう。というデンジャーな空気を醸し出している
と考えていると、彼の視線がオレの股間に注がれている事に気が付いた。
・・・?
良く見ると、明らかにソッチ系のフレーバーを醸し出している。ここはハッテン場か?
オレの一つウエノ男が危険信号を出している。一刻も早くこの場を去らなければ・・・
しかし時すでに遅し。借り物のシャンプーを手の平に出しているため、後戻りができなくなっていた。そんなんさっさと洗い流して風呂から出ればエエ、て?
いや、さすがにこの親切心は無下にできない・・・須藤ですから。
どうやら彼はいわゆる【ウケ】である事を察知したオレは、あえての内股で女性の様なウォッシングを心掛けた。同じウケだとアピールをしたところ、あからさまに不機嫌になり舌打ちされた。それ全部あげるわ、と言われフルチンで去っていった。
・・・助かった。何とか自分の貞操を守る事が出来たようだ。窮鼠猫を噛むとはよく言ったもんや。追い詰められれば生存本能が目を覚まし、自身の危機を回避しようとありったけの知恵を自然に振り絞るようになる。
まさに個別指導通知が届いた時の状態やな。早く動かなければやられるだけや。いつまでも落ち込んで迷っている暇はないで。
そんなこんなで入浴も無事終了した。なんか余計に疲れたような気もするが、考えても仕方ない。リフレッシュできたと思って気持ちを切り替えるしかない。
脱衣所に出たところ、先程の仏がいた。バスタオルで全身を包み、どうやら予想通り女性側のようだ。
あっ、オレもウケのフリをしていた事を思い出した。ここで男らしさを出す訳にはいかない。そう感じたオレは、咄嗟に自分の全身を同様にバスタオルで包み、仏と同じスタンスを取っておいた。他からの刺すような視線が痛く突き刺さるが、背に腹は変えれない。
一体オレは何をしているんだ、という気持ちを抑え早急に着替えを済ませ、清水湯を後にした。
せっかく汗流してスッキリしたのに、なんか違う汗をかいてしもたで。
まあエエ、とりあえず一次会の居酒屋へ行くとするか。
