〔お前ら、どういうつもりや?カラオケにも行くってあらかじめ言っといたやろが!〕
B先生がキレた時の中国人並みに、けたたましい怒鳴り声を辺り一帯に轟かせている。
「やめて欲しいですね恥ずかしい、仮にも歯科医師ですよ。」
『仮ちゃう、真性の歯科医師や。』
なんか技官みたいや、どーでもエエ言葉尻にいちゃもん付けるところが。
《でもいんちょ、一次会の飲み会には全員参加しましたよ。さすがにカラオケは自由参加でエエんちゃいますか?》
スタッフも食い下がっとる。
イヤだから、いんちょって呼ぶな。
時代を先取りしたスタッフや。今時何でもかんでもホーケー強制パンツ穿かせたら、スタッフは定着せんからな。
〔最後まで参加する事に意味があるんや!この意味が分かるか、お前らに?〕
B先生が、稲葉浩志ばりにシャウトし出した。
「こりゃあきませんわ、他人のフリしてこの場を去りましょ。こっちまで恥ずかしくなってきますよ。」
『言われんでも、他人のフリはしとる。話振られたらスタコラ退散できるようにスタンバっとけ。』
「何かあったら止めに入るんちゃうんですか。やっぱりただの偽善者じゃないすか。」
『まずは自分を安全圏に置く事が重要や。そこから他人をレスキューできる余裕が生まれるんや。』
「生保が募金なんかすんな、てヤツっすか?」
≪そういう事や。≫
「とんだ偽善者じゃないっすか。」
≪戦国武将と言わんかい呼ばんかい。あいつらをよく見てみい、主君をコロコロ変えようが恥知らずな策を練ろうが、結局は要領良く立ち回った武将が末永く行き残っとるやないか。勝てば官軍なんじゃ!≫
「先生は、ただの卑怯モンですけどね。」
『お前に言われたないんじゃ!』
煽るのはこのくらいにしておこう。
そうこうしているうちに、遂にB先生のリミッタ―が完全に外れた。
〔もうエエわ、帰れ!全員帰れや!〕
とその日一番の魂の叫びをかました。
アカン、どんどん恥ずかしくなってきた。
ふと気付くと、オーディエンスもどんどん増えてきた。
どうやらB先生も恰好エエとこ見せたかったみたいや。
「一周回ってカッコ悪いですよね。」
『でも、ゆーたった感が凄いやんか。おれ、イケてるやろ?的な。このおれにはB先生の気持ちが良く分かる。』
A先生が半笑いで言っている。
それを聞いたスタッフは、《はい分かりました》、と言って全員そそくさと帰っていった。
「思いっきり想定内ですよね。」
『B先生にとっては想定外やったみたいや。見てみぃ、口あんぐりして白目剥いとるやないか。』
「まさか帰るとは思ってなかったんでしょうね。何にせよ、もうそういう時代じゃないって事ですかね。」
『そういう事や。周りから失笑が漏れとるし、とんだパンダやで。』
「ピエロでしょ。これがきっかけで、みんな辞めなきゃ良いんですけどね。」
後日A先生から聞いた話だが、案の定というか何というか、その翌日には全員揃って退職したらしい。想像以上に大変やった、との事だ。
なぜならA先生の医院に、スタッフ派遣の要請があったからだ。
その話を聞いた際、
「で、派遣したったんですか?」
と質問したところ、
『する訳ないやろ、テキト―こいて断ったわ。巻き添えくらうだけやないか。』
との答えが返ってきた。
言っとる事とやっとる事が違うやないか。
・・・全く。
とんだ偽善者、いや、詐欺師やで。
知らんけど。
