悪夢の院内運動会

悪夢の打ち上げ⑭

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意を決してステージに上がる。

 

 

久しぶりや、この緊張感。バスケの大事な試合の時よりも緊張する。

 

完全なるとばっちり、もとい巻き込み事故なだけに理不尽な気持ちは刻一刻と増していく。

 

しかしここまで来てケツをまくっては、須藤の名が廃るで。

 

やるしかない、そう覚悟を決めた。

 

 

ちなみに、緊張した時に「アガる」という表現がなされるが、実態としては呼吸が「上がる」事により、重心が上へ「上がって」しまうという事だ。

 

従って、最も大事な腰から下の下半身に力が入らなくなり、簡単に相手に主導権を握らせてしまうというのが「アガった」状態のお決まりのパターンの様だ。

 

 

【足元を掬われる】とはよく言ったもんや。

 

個別指導では、くれぐれも地に足付けて臨んでな。

 

 

 

ちなみにリラックスして落ち着く時に深呼吸するのはお決まりの行為だが、あれは臍下丹田に呼吸の芯を持っていき、重心をエエ感じに下に持っていくためのものだそうだ。

 

 

知らんけど。

 

 

 

そんな事を呑気に考えている暇はない。ここまできて、少なくとも愛子さまに恥をかかせるわけにはいかない。

 

早速、先程の佳子さまを見て学習した事を実践する時がやってきた。

 

 

それは、相手を際立たせるために引き立て役に徹する事だ。

 

歯科医院でも、相手の予想を上回る感動を提供する事がリピーターに繋がる。

 

結局は、余計な小細工をする事よりも自分のハートを相手のハートに擦り合わせる事が最も大切なスタンスだ。日曜の朝、ママレードボーイで言っていた。

 

 

知らんけど。

 

 

 

となれば、まずは選曲が大切や。女性が歌いやすく、パーティーにピッタリの曲をチョイスする必要がある。

 

そう思いを巡らせていると、いきなりイントロが流れ出した。愛子さまが勝手に入力したみたいや。

 

 

その曲は・・・ロス・インディオス&シルヴィアの【別れても好きな人】や。

 

 

・・・おい、ちょっと待て。それは、元恋人同士の名曲や。

 

 

 

もちろん、愛子さまとオレは付き合った経験はない。今日初めて出会った仲や。

 

 

なんちゅー選曲するんや、と思い愛子さまを横目でみると、頬を赤らめドスの利いた目をしながらマイクを握り締めている。

 

 

・・・アカン。間違ってストップボタン押すと、殺されるパターンや。

 

学生時代、ノリノリで歌っている先輩を笑かせようと途中でストップしたところ、半殺しにされた過去を思い出した。

 

甘酸っぱい、青春の味や。いや、口いっぱいに血の味がしたわ。

 

 

そのトラウマが、オレの背中を押してきた。早くお前もマイク持たんかい、と・・・

 

 

さらにもう一度愛子さまを見ると、そのトラウマと同じように、{早くマイク持てや!}とシャウトしている。いや、そこは愛子ンタクトでエエやろ。

 

 

普通にクンロクをかまされているオレを見て、オーディエンスはケラケラと笑っている。

 

 

・・・他人事と思って、茶化すことしか考えていない。いや、オレも逆の立場なら同じ事をするか。この期に及んで文句ばかり言っても仕方ない。

 

 

 

そしてイントロが終わり、Aメロへと突入していく・・・

 

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