機転を利かし替え歌を披露したので、皆はより一層の盛り上がりを見せた。
はずだった。
しかし、ここでも体育会系特有の悪癖が露呈した。
<はい~~~!スドちゃん、それ粗相!!>
・・・またかい。
<スドちゃんの、ちょっと良いとこ見てみたい!そ~れ、イッキ!イッキ!!イッキ!!!>
強引にオスゴリラ共が割って入ってきた。よく見ると、メスゴリラも乱入している。
ノリが良いんじゃない。ただ単にタチが悪い絡み酒のヤカラ集団やんけ。
まるで香川照之や市川海老蔵のようだ。
それにしても、どこまでオレを生贄にしたら気が済むんや。
仕方なしに生ビールをイッキ飲みする。さすがのオレもそろそろ臨界点に達する頃や。
とりあえずミッションをこなし、一息つく。疲労感と安堵に包まれるとは、この事か。
・・・いや、そんな事はどーでもエエ。愛子さまとデュエットしていた事をすっかり忘れていた。
そういえば、イッキ飲みの最中もBGMは鳴り響いていた。
おそるおそる愛子さまのご尊顔を拝見すると・・・こめかみに血管が浮き出ている。
アーノルド・シュワルツェネッガーの上腕二頭筋みたいや。
・・・こ、殺される!
急いでマイクを再び手に取り、何食わぬ顔でデュエットに復帰する。有事の際は余計な良い訳はせずに、行動で示すのが一番効果的だ。
知らんけど。
いつの間にか曲もラストのサビや。
{わかれても~~} 「す~きなひと~~」
{わ~~かれても~~~} 「す~きなひ~~と~~~」
・・・良かった、間に合った。
とりあえず大惨事は免れたで。すると、愛子さまがニヤリと白い歯をのぞかせた。人間がこういう顔をする時は、良くない事を企んでいる時だと相場は決まっている。
案の定ホッとしたのも束の間、間髪いれずに次の曲の前奏が流れてきた。
どうやら愛子さまがまた入力したようだ。
カラオケがお好きなんですね、とおいとましようとしたところ、強引に手を握られステージに引き戻された。
す、すごい力やで。オレのゴールドフィンガーを潰す気か。
怒るでしかし。
てか、なんでオレが二曲も歌わなアカンのや。さっきの運動会でのリレーといい、純然たる被害者やないか。
ちなみに次の曲は、久保田利伸withナオミ・キャンベルの【LA・LA・LA・LOVESONG】だ。オレ達世代のナイスミドルなら、青春真っただ中の頃に社会現象を巻き起こした【ロングバケーション】を見た事がない青少年でも、イヤという程耳にした名曲だ。
ちなみに一切ナオミ・キャンベルの影すら見えない事から、偽ナオミ説も出た事のある名曲だ。
従って、ナオミ・キャンベルがたまに囁く程度の名曲だ。
つまり、実質久保田利伸がソロで歌う名曲や。
要するに、ほぼオレ一人で歌わなアカン名曲や。
エエかげんにせえよ、マジで。
{さっき中座してビール飲んだ罰よ。}
好きで飲んでたんちゃうわ、見とったやろ。
目の座り方に、ロイヤルパワーを感じる。消される前に、あの白黒のPVでの久保田利伸みたいに、両腕を水平にしてノリながら歌っとこ。
・・・もうイヤや。
