悪夢の院内運動会

悪夢の打ち上げ⑲

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鉄砲玉は、明らかに憔悴している様子だ。あれだけ気力と体力を使用したんや、残りのHPもあとわずかってところでこの仕打ちや。傍から見たら、ただの吊るし上げやで。

 

 

しかしその光景を見て、院長連中は皆一様に<うむ>と頷いている。

 

 

何が<うむ>やねん。オレら世代の体育会系はまだ免疫あるからエエけど、そんなんゆとり相手にかましてたら、ソッコーで辞めてまうで。

 

 

 

まあ実際のところ、その鉄砲玉もとい勤務医は運動会が終わってからソッコーで辞めたらしいけどな。

 

 

そりゃそうなるやろ。歯科医師としての研鑽を積みに行ってるのに、運動会で全力を出して接待した挙句、たかがカラオケでキレられたらウンザリするわ。

 

 

ちなみにオレは、理不尽な仕打ちMAXの幹事やけどな。

 

 

チルドレンに一斉に逃亡されたB先生を見ながら、そんな事を考えていると・・・

 

 

女癖が悪くて有名なA先生が、何やら女性陣と盛り上がっている。

 

 

 

この空気の中、よくやるで。

 

 

「A先生。カラオケでセクシャルハラスメントしたらあきませんよ?」

 

『そんなんちゃうわ。俺のストロベリートークの邪魔すんな。それに、そんなんしたいんやったら、さっさと近くのスキャンダルに行くわ。』

 

「エエ年した歯医者が、そんな所攻めんといて下さいよ。」

 

『金払って後腐れなくプレーするのが、大人の嗜みってもんやろが!』

 

 

静まり返った部屋に、A先生の雄叫びがこだました。

 

 

それまで笑顔だった女性スタッフが、見事なまでに引き倒している。

 

 

 

やはり、酔っ払った時こそ【沈黙は金】かもな。ついつい余計な事を喋ってしまうもんやし、お口にチャック・ウィルソンが正解かもな。

 

 

 

知らんけど。

 

 

 

しまった・・・という顔をしているA先生に追い打ちをかける。

 

 

「いや、僕が言いたいのはね。」

 

<なんや、まだ何か言いたい事あるんか?>

 

「あの前十字靱帯を断裂したスタッフは、大丈夫なのか?という事ですよ。」

 

<・・・>

 

 

言葉を失うとはこの事か。そしてさらにA先生の顔色が変わってきた。水を差されたというよりは、調子に乗ってプールで長時間遊んだ後の子供のように青ざめた顔をしている。

 

 

天国から地獄へ、とはこの事か。

 

 

 

個別指導でもそうや。実際、診療もイケイケでプライベートもパラダイスの先生が、個別指導通知が届いた瞬間、この世の終わりのような顔へと変貌したのを何度も目の当たりにしてきたからな。

 

 

大切なのは、いつ何時も有事は訪れるものだ、と最悪の想定だけはしておいて楽観的に腹を括って覚悟を決めて、日々を過ごす事だろう。

 

 

そう、新日本プロレスのストロングスタイルのように。

 

 

知らんけど。

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