中医協 令和3年7月21日開催された「第 484 回中央社会保険医療協議会 総会」において歯科関連の項目がありましたのでお知らせします。
今回、歯科用貴金属の価格改定の在り方について、を議題されました。
金銀パラジウム合金等の歯科用貴金属は、その素材の金やパラジウムなどの価格が市場取引価格の影響を受けやすいということで、現行の対応としまして、2年に1度の市場実勢価格に基づく診療報酬改定における告示価格の決定に加え、素材価格の変動幅が、その時点での告示価格のプラスマイナス5%を超えた場合に4月・10 月に行う「随時改定Ⅰ」や7月・1月に、プラスマイナス 15%を超えた場合に行う「随時改定Ⅱ」の、最大年4回の改定により対応してます。
歯科用鋳造用金銀パラジウム合金を例に、歯科用貴金属の告示価格の改定の時期と対象となった素材価格の対象期間を示されています。
例えば、示されている令和2年4月から同年6月末までの期間の平均素材価格については前回改定に用いた平均素材価格に対する変動幅が5%を超えたことから、令和2年 10 月に「随時改定Ⅰ」を行っいます。
他方、令和2年7月から9月末までの平均素材価格については、前回改定に用いた素材価格に対する変動幅がプラスマイナス 15%を超えなかったことから、令和3年1月には随時改定は行わず、平均素材価格の対象期間がさらに 10 年 12 月末まで持ち越しされて、その3カ月後の令和3年4月に「随時改定Ⅰ」を行うことになった状況などを示しています。
CAD/CAM冠は歯科用貴金属の代替材料として期待され、その使用も伸びておりますが、現時点では第一大臼歯の一部や最も奥にある第二大臼歯は保険適用とはなっておらず、この大臼歯の治療には歯科用鋳造用金銀パラジウム合金が汎用されております。
まとめ
歯科用貴金属材料の基準材料価格の改定につきましては、一定期間ごとの貴金属価格の平均価格を算出して計算された金額を3カ月後に告示価格に反映する、いわば後追いの制度になっています。
従前から、使用する貴金属材料の素材価格が相場の影響を受けやすいということが問題点として中医協においても指摘されてきましたが、2年に 1 度の定時改定に加え、平成 12 年にはプラスマイナス 10%変動した場合、4月・10 月に随時改定が加わり、平成 22 年には随時改定の幅をプラスマイナス5%変動した場合に改定し、対応がなされてきました。
過去を俯瞰しますと、後追いではありますが、価格変動に対応する制度として一定の役割を果たしてきた制度設計であると考られています。
しかしながら、ここ数年、金属素材価格の上昇機運が続き、特に直近では急激なパラジウムの高騰があり、素材価格の急騰に対しても、常に実勢価格が告示価格を上回る状況が続き、中医協においても理解の得にくい制度になっています。
そもそも歯科用貴金属材料の激しい価格変動を反映するには近年の状況を鑑みると現在の後追いの仕組みでは限界があり、抜本的な制度そのものの検討も必要ではないかと考られています。
ただ、そのような対応には時間もかかることもあり、事前の対応として随時改定の仕組みを見直す議論されてきました。前回の診療報酬改定議論が終わった2月頃に、これら歯科用金銀パラジウム合金に関する急激な価格変動に関しまして随時改定ルールの見直しを要望し、現在の「随時改定Ⅱ」の仕組みを検討し運用を始めています。
年に4回の価格の見直しを実施してても、特に直近では市場価格の高騰傾向がさらに強く、その後の議論においても反映される時期の乖離につきまして、改善の余地はないかという指摘がされています。
この問題につきましては、より現場の実態を反映できる制度設計の構築、ならびに改定ルールの透明性の確保のために具体的には、反映される時期のタイムラグの問題を解消するために、調査時期をできるだけ直近に行うことや、見直し頻度の検討などが必要と考えられています。
加えて、定時改定における指定調査の精度向上も重要と考えられています。