保険算定部

事前承認ブリッジ物語

事前承認ブリッジを算定してみました。

まれな算定項目で、事前承認ブリッジと言う技術評価項目があります。事前承認ブリッジとは、

・歯冠補綴物又はブリッジを保険医療機関において装着した日から起算して2年を経過するまでの間に、外傷、腫瘍等 ( 歯周疾患が原因である場合を除く。 ) によりやむを得ず当該 「 歯冠補綴物又はブリッジ 」 の支台歯、隣在歯又は隣在歯及び当該 「 歯冠補綴物又はブリッジ 」 の支台歯を抜歯しブリッジを装着する場合。

・有床義歯では目的が達せられないか又は誤嚥等の事故を起こす恐れが極めて大きい場合であってブリッジを行う以外に方法がない症例にブリッジを装着する場合。

・矯正・先天性欠如等により、第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯欠損のブリッジにおいて、欠損歯数は3歯であるが、間隙のほうが1歯分程度小さく2歯分となる症例にブリッジを装着する場合。

・実際の欠損歯を反映した歯式では保険給付外となるブリッジであって、欠損部の間隙が1歯分少ないような症例にブリッジを装着する場合。

・移植後一定期間経過した移植歯を支台歯とする1歯欠損症例のブリッジであって、骨植状態が良好であり、咬合力の負担能力が十分にあると考えられる場合。

等が適応となります。事前承認ブリッジの地方厚生局への申請には書類と共に、必要資料などの提出が義務付けられています。その必要資料などとは、

・ 理由書
・ 模型 ( 上顎及び下顎 )
・ エックス線フィルム又はその複製

があげられます。地方厚生局に届け出る事前承認の補綴には小児義歯というものもあります。

・先天性疾患以外の疾患により後継永久歯がない場合に準ずる状態であって、小児義歯以外には咀嚼機能の改善・回復が困難な小児に対して小児義歯を適用する場合。

が、適応になります。一般開業歯科医院で時々悩むこととしまして、補管(クラウンブリッジ維持管理料)の2年間の縛りになることでしょう。2年間の間に何かしらの問題が起きてしまった場合に、自費で対応するか、無償で療養の給付を行うか、テックでセット後からの2年間を経過観察するのか、いくつか方法があります。症例によっては、めんどくさがらずに事前承認ブリッジを考慮に入れてもよいのかと思います。

今回、事前承認ブリッジの経験をしましたので歯科医師、患者、地方厚生局の三者での対話形式でお送りします。

患者 「先日、事故に遭って前歯がぐらついたんですけど見てもらっていいですか?」

歯科医師 「どれどれ、おっ、これは歯が割れてしまってますね。(…うう、半年前に入れた前装冠の部位ではないか(泣))」

患者 「どうしたらいいでしょうか?」

歯科医師 「抜歯して入れ歯か、ブリッジになりますね…」

患者 「入れ歯は嫌です。ブリッジでお願いします。」

歯科医師 「分かりました。(どうしよう?あと一年半テックで様子を見るか?そういえば事前承認ブリッジというものが、あるらしいけど一度やってみようか…)」

患者 「宜しくお願いします」

後日

歯科医師「今日は前歯の抜歯をしますね。その前に抜く前の型をとりますね。」

抜歯も終了し、さらに後日

患者 「抜歯後、痛くなかったです。ブリッジ楽しみにしてますね。」

歯科医師 「任せてください。」

あとは、地方厚生局に書類と、レントゲンと模型も提出したし受理を待つだけだな。

スタッフ 「地方厚生局から、電話ですー。」

歯科医師 「はい、はーい。(ガチャ)代わりました、歯科医師です。」

地方厚生局 「事前承認ブリッジの件なんだけど、隣在歯の状態はどうだったの?」

歯科医師 「根尖病巣もなく、歯周組織の状態も安定しており、骨植良好でした。

地方厚生局 「隣在歯の前装冠はどこでやったもの?」

歯科医師 「元々、入っていました。」

地方厚生局 「じゃー、他院で補管中ってことか、まぁ、いいよ。」

歯科医師 「ありがとうございます。」

地方厚生局 「ありがとうじゃないよ、君。必要資料足りないんだけど…。これじゃ、受理は無理だね。」

歯科医師 「えっ、何が足りないんですか?」

地方厚生局 「模型だよ、模型。対合はないし、全顎で模型とってもらわなくちゃ評価できんでしょ?技官の先生も怒ってたよ。」

歯科医師 「(てか、あなたは誰なんですか…後の話の中から分かったことで事務員でした。)分かりました。すぐ模型を用意して送ります。(技官は犬歯誘導とかわかるの?咬合器マウントするのか?てか、エキスカーションでファセット追って、評価するのか?どこのスタディーグループなん…)」

再度、模型提出後

歯科医師 「よし、事前承認ブリッジが受理されたな。受理番号もあるしOK。」

患者 「傷もなおりましたので、ブリッジやってください。」

歯科医師 「分かりました。形成してブリッジの印象と…。さて、レセコン打つかな。あれ、どうやって算定すればいいの?わからない…やばい。」

スタッフ 「歯科医師ー。早くレセコン打ってください。患者さん、遅いって切れてますよー。」

歯科医師 「はい、はーい。(焦り)適当に打つかな。えっ、滅茶苦茶エラーでる。どうしよう(泣き)」

コンサル 「両隣在歯の失PZのみを算定し、適応欄に事前承認ブリッジの受理番後と日付を記載してください。印象は算定を控えてください。まずは、これでレセプトを出しましょう。」

歯科医師 「あっ、ありがとうございます。(あなたは誰…)」

その後、

歯科医師 「特に返戻もなく、無事ブリッジのセットまで終わった。よかった。」

患者 「ありがとうございます。」

歯科医師 「今後は、外傷には気を付けてくださいね。」

終わり

 

 

 

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