保険算定部

初診起こしのリスキーな理由 ~青本の解釈より~

巷では、依然としてリコール再初診など初診起こしをしている歯科医院がまだまだあると思います。リコール再初診は返戻の対象となり始めている理由としては、ご存じの方もいると思いますが、国保連合や支払基金にてのコンピューターチェックにより再初診がリコール再初診なのかを人の手を煩わせずにあぶり出されているからです。つまりは機械的に判定されて、返戻となっているのです。

 

私もコンサル先の先生方にも初診起こしをしている先生には、是非とも初診にせずにSPT にするなど、再診で算定してもらうようにお伝えしている次第です。

 

今回は保険診療の一丁目一番地の初診料について、青本の解釈から初診料というものは何なのかを紐解いていきたいと考えております。

 

初診料というものは開業後、自然と算定できるものと思われていますが、一応厳密なルールがありまして、外来診療において院内感染防止対策の体制を整備し、地方更生局に届け出た保険医療機関が算定できる評価項目になっています。

 

そのなかで、特に初診料が算定できない規定がある場合には初診料は算定できないのです。どういうことかと解釈しますと、つまりは保険医療機関でない場合と考えられます。保険医を返上した場合や、個別指導や監査にて、保険医取り消しや停止になってしまった保険医療機関は算定できません。自費診療でしたら可能ですが、保険診療ができないと患者さんの診察をするのにも非常に問題が出てしまい、患者さんが来てくれないために倒産してしまう可能性さえあります。

 

そして、初診料を算定するに当たりましては、非常にフワッとした内容として、患者の傷病について歯科医学的に初診と言われる診療行為があった場合に算定するとされています。非常にフワッとしていますので、何でも初診にできそうなのですが全然フワッとしていなくて、かなり厳密な保険ルールがあるのです。

 

そして、同一の保険医が別の保険医療機関にて、同一の患者を診療した場合にも初診起こしはできないと言うルールがあります。厳密に言いますと、ある保険医が開業して、ファン患者さんをつれていって、診療した場合にも初診を算定することはできないと言うことです。

 

では、初診にできる場合というものは何なのかを解説していきたいと思います。

 

まずは、患者違和を訴えて自分から診療を求めた場合です。診断の結果が、違和感が病気では特にないと診断したときにも初診料は算定できます。つまりは、例えば患者さんがガンを心配したけれども別にガンでなかった場合には、疑い病名にて、初診料の算定ができるということになります。

 

続きまして、検診についてです。歯科検診を希望された場合には初診料は算定できません。ただし、検診の結果病気が見つかり、その病気にたいして治療の必要性が認められた場合には初診料を除く、他の診療行為に対しましては、医療保険の給付対象として算定可能です。

 

継続中の患者さんについてです。

 

治療継続中のなかで、新たに病気が見つかりその病気の治療のために初診料を算定することはできません。そんなことをするケースはあまり無いとは思いますが。

 

一月以内に二回の以上の初診料算定につきましては、することはまず無いと思いますし、する意味が私にはわかりませんので、コメントを控えさせていただきます。

 

患者が任意に治療を中断し、一月以上経過したあとの診療にたいしては初診料の算定はできます。その場合においては、同一病名、同一症状であっても初診料の算定はできます。アポイント帳に予約はもちろん入っていないはずですよね。しかしながら、レセプトは臭ってきます。

 

歯科疾患管理料を算定した場合でも、一連の治療が終了した場合には二ヶ月を越えた場合には初診料を算定できます。多くの歯科医院で算定されている、そして都合の良い文言だけをかいつまんで算定しているのが、このレセプトを二枚はさんでの初診起こしでしょう。

 

しかし、注意してください。そこには除外される二つの初診料を取り扱わないケースがあるのです。

 

①欠損補綴を前提とした抜歯のケースです。抜歯をして治癒待ちの間、初診を起こすのを待っている場合は不可です。抜歯窩がなおるまでの間、初診を立ち上げることができるまでの二ヶ月間の期間まって初診を立ち上げて補綴をするという行為です。これはよくないです。

 

もっとよくないのは、抜歯窩が十分なおってインプラントを埋入できるまで骨が治癒するのを待ってからの初診の立ち上げです。レセプトに補綴の算定は出てこないですが、個別指導でリコール再初診が選定されて、インプラント補綴でドンピシャだった場合には目も当てられません。

 

そんなリスキーなことをするくらいでしたら、一連の歯周治療の終了後SPT に落とし込むなど、きれいなレセプトに仕上げておくべきです。特に、インプラント補綴のような、シビアなケースはくれぐれもお願いします。それが、自分の医院を守ることにもなります。

 

②慢性疾患である歯周病などのケース。明らかに同一病名の場合には初診料の算定はできません。一昔前でしたら、人の目で審査されていましたので、他病名をつけて、初診料を算定できていた時代もありましたが、現在ではコンピュータチェックにて跳ねられてしまいますので、リコール再初診は今後も厳しいと言わざるを得ません。

 

③SPT 中。出来ません。

 

以上が初診料に際してのお話しとなります。

 

青本の質疑応答で面白いことが書いてありました。

 

慢性疾患である歯周病などの診療が継続している場合は初診として扱わないとされたが、初診料の取り扱いが変更になったのかとの問いにたいして、取り扱いは従前の通りと。

 

「しつこいな!ちゃんと読めよ!」と。

 

保険のルールは複雑です。

 

したい治療ばかりしていたら、レセプトは大きく歪みます。

 

もののけ姫のアニメのように、理想的な保険治療と、理想的な臨床の治療は一緒に住むことができないのです。

 

理想の算定をして、その算定通りに治療をすることが経営を安定させ、理想的なレセプト作成になります。

 

今一度、ご自身の診療内容を見直していただき、歪んだレセプトをただしてもらえればと思います。

 

もしくは、それでもしたい治療をしたい場合には保険医の返上を…

 

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