令和3年11月10日開催の「第 495 回中央社会保険医療協議会 総会」より、「在宅歯科医療について」です。
在宅歯科医療における他職種との連携についての資料となります。
歯科訪問診療を実施したきっかけを再掲してあります。
在宅医療に関する医科歯科連携を推進する観点から、医科点数表に設定されております診療情報提供料1の歯科医療機関連携加算1の概要と算定回数です。在宅療養支援診療所または在宅療養支援病院から歯科訪問診療の必要性を認めて、歯科の医療機関へ情報提供を行った場合に加算の対象となるものです。
在宅療養支援歯科診療所または在宅療養支援病院以外からも、医科の外来から歯科医療機関に歯科訪問診療を依頼される場合があります。
こうした在宅医療における連携に関する課題をまとめています。
在宅歯科医療の論点としまして、歯科訪問診療として提供される医療について、実際に行われる診療行為の内容や診療時間などを踏まえ、評価の在り方についてどのように考えるのか。また、患者像を踏まえ、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料、小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の評価の在り方について、どのように考えるか。3つ目です。在宅療養支援歯科診療所について、医科医療機関等との連携状況や訪問箇所数の実態を踏まえ、在宅歯科医療の質を確保しつつ、さらに推進する観点から、施設基準の在り方をどのように考えるのか。円滑な在宅歯科医療の実施の観点から、医科医療機関と歯科医療機関の外来から在宅に移行する場合の連携に関する評価について、どのように考えるのか、を挙げています。
質疑応答
二号委員コメント①
地域包括ケアシステムの推進に向けて、昨年、日本歯科医師会が発刊しました「2040 年を見据えた歯科ビジョン」でも言及しておりますように、在宅歯科医療に関しましても、推進に尽力してまいりました。今後も重要課題と位置づけ、地域保健におきましても、引き続き啓発していくべきと考えております。地域歯科医療を担う歯科医師自身の高齢化も進む中、各地域における歯科医療提供体制については、喫緊の課題と考えております。現在、在宅歯科医療は、歯科診療所の2割ほどの実施状況であり、できるだけ実施する医療機関が増えるように、裾野を広くするような検討が非常に重要と考えておりまして、本日、参考資料も提出させていただいておりますので、ご参考にしていただければ幸いでございます。
「歯科訪問診療において提供される医療について」ですが、1つ目の丸の、実際に行われる場所や診療行為内容や時間の違いによる評価の在り方については賛同いたします。実施する歯科医師や歯科専門職が納得できるようなメリハリのある評価にお願いいたしたく思っております。2つ目の丸の小児訪問口腔リハにつきましては、新設以降、なかなか数が増えていない状況でございますが、医療的ケア児等を含めて、お口の問題への対応は課題でございますので、時間や手間に見合った評価とともに、より連携が進む方策も必要と思います。また、課題として小児から青年期への年齢の移行に伴う提供体制なども、訪問口腔リハの推進とともに解決していっていただきたいと思っております。
次に、「在宅療養支援歯科診療所について」ですが、3つ目の丸ですが、届出医療機関では、それ相当の実施実績がある一方で、ある決まった医療機関への集中や、かかりつけ歯科医と分断される問題などが地域歯科医療現場ではあると聞いております。せっかく歯援診1と2に段階的に在宅を実施する施設基準を設けておりますので、1はより専門的に、2はより裾野が広がるような工夫をお願いしたいと思っております。今回の資料にもありますように、在宅歯科医療は、ある一定程度の準備が必要な上に、急な依頼にすぐに対応できる歯科診療所も少ない中、昼休み時間や診療後に工夫して実施している実態もございますので、小規模な歯科診療所においても、外来において、かかりつけだった方への在宅歯科医療が継続できる工夫をさらにお願いしたいと要望いたします。
最後の他職種連携についてですが、非常に重要な課題と考えております。4つ目の丸ですが、介護施設やケアマネージャーのみならず、医科診療所や歯科のない病院、ならびに薬局など、幅広く患者情報を共有できるような工夫が必要と考えています。コロナ禍において基礎疾患の訪問診療は継続されているものの、口腔の管理は延期になったケースも多かったように聞いております。平時より、誤嚥性肺炎予防や口腔健康管理が感染予防につながることや、栄養改善のための口腔機能の維持・向上など、歯科が関わることで在宅や施設療養者のQOLに貢献できると考えておりますので、外来診療からの移行も含めて、さらに推進できるよう配慮いただきたいと考えています。また後ほど、専門委員のほうからも在宅歯科医療に関する発言をお願いしたく思っておりますので、よろしくお願いいたします。私からは以上でございます。
二号委員コメント②
歯科訪問診療を実施した患者の状態像についてでありますけれども、17 ページにお示しされているように、脳血管障害や認知症以外にもさまざまな障害、疾患を有する患者さんが対象となっています。パーキンソン病の患者さんも増えているというデータがございますが、パーキンソン病をはじめとした神経・筋疾患は進行性の疾患であるため、原疾患の病状悪化の状態、スピードに合わせた対応が歯科訪問診療でも必要となっています。次に、小児患者の対象年齢についてです。
小児の歯科訪問診療の対象は、医療的ケア児、重症心身障害児、また小児がん等の有病児など在宅で療養する小児です。これらの患者さんへの歯科訪問診療は、小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料で対応しておりますが、その対象年齢が 15 歳未満となっています。そのため、15 歳以上の年齢の場合に、現場では難しさを感じることも少なくありません。15 歳以上では、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料等で算定することになりますが、小児のときと要件が異なるため、算定できないケースもあります。健常な小児の口腔機能発達不全と異なり、重度の障害のある子どもたちは、加齢とともに障害が改善していくことは少なく、むしろ障害が重症化し、さらに歯科的対応も困難となっていくことが想定されます。15 歳以上の年齢になっても、スムーズな移行ができるよう、ご検討いただきたく思います。次に、患者の重症度、特に呼吸管理を行っている小児の診療についてです。
歯科訪問診療では、12 ページにあるように、かなり多くの器具・機材が必要です。また、27 ページのタイムスタディー調査にもあるように、小児の歯科訪問診療では診療時間が他と比べて長くかかっています。28 ページにお示しいただいたように、感覚過敏への対応や姿勢調整など、特別な対応が必要となっていることも要因にあります。人工呼吸管理を行っている患者さんも多く、呼吸不全が強い場合や嚥下障害が重度な場合は、歯科診療の難易度が高くなります。患者さんの重症度に応じた対応について、ご考慮いただけると助かります。
最後に、他職種との連携の必要性についてです。医療的ケア児や重症心身障害児は、歯科診療において特別な対応が必要なため、小児の歯科訪問診療を行っている歯科医院は全国的に充実しているわけではありません。そのため、歯科を保護者が自ら探すことは困難な現状にあります。これまで、小児の歯科訪問診療の紹介元は主に在宅医、病院主治医、訪問看護、訪問リハからとなっています。NICUやPICUから在宅に戻るタイミングに合わせて、医科から歯科にご依頼いただくことで、小児の歯科訪問診療の実施が可能となり、在宅療養時の口腔機能、歯科疾患の重症化予防につながると考えます。以上です。よろしくお願いいたします。
一号委員コメント①
歯科訪問診療において提供される医療については、先ほど委員が述べられたように、居宅や介護保険施設、病院など診療行為や診療に要する時間を踏まえて、メリハリをきかせることが必要であると考えます。私からは以上です。
一号委員コメント②
在宅歯科医療につきましては、特に高齢者の口腔ケアのニーズが増えているものの、それに応えられていないというのが現状ではないかというふうに認識しております。この前提で、在宅療養支援歯科診療所の論点につきまして、歯科訪問診療の算定件数が過去1年間で 10 回以上、他の医療機関等からの依頼による実績が過去1年間で5回以上という点が届出を行っていない理由と回答している診療所が一定数、存在しております。これらの要件につきましては、例えば算定件数であれば平均して月1回未満の頻度となっており、これ以上の緩和は望ましくはないというふうに考えております。が、例えば地域内での連携不足など、満たすことができない要因を分析することが必要ではないかというふうに考えております。また、先ほど専門委員からのお話がありましたけれども、この在宅歯科医療について、例えば 15 歳以上の方を診療したときに、ケアが、適用が、診療報酬の適用ができないとかですね、その辺の不合理な部分が、まだ現状の診療報酬の体系に残っているようですので、その部分については改めるというような検討も行っていいのではないかというふうに考えます。
二号委員コメント③
私のほうからは、50 コマ目にあります論点の中の、在宅歯科診療における他職種連携に関連して発言をさせていただきたいと思います。以前、在宅の議論で発言させていただきましたが、歯科医師と薬剤師、歯科診療所と薬局の連携推進も重要なポイントであると考えます。特に、薬剤師が、薬局薬剤師がですね、在宅訪問する際にはですね、取り扱っている商品として、口腔ケア商品等もあわせて提供する機会もあります。そういった中で、薬剤師がその際にですね、チェックシート、あるいはチェックリストなどを活用して口腔チェックを行って、必要に応じて歯科への受診勧奨を行うなど、歯薬連携の取組が今後ますます重要になってくると考えます。薬剤師会としても、これらの取組は地域ごとにですね、引き続き推進してまいりたいと思っております。以上です。
一号委員コメント③
まず、資料の5コマ目にですね、都道府県別の実施医療機関の割合というのが出ておりますけども、非常に地域差が大きいということは8月の総会でもコメント出ておりますけども。当然、地域特性というのは考慮する必要があると思うんですけども、もし、非常に地域の連携とかでですね、好事例があれば、それを情報共有するということで、少しでも実施機関を増やすということをぜひ検討いただければというふうに思います。続きまして、21 コマ目、22 コマ目なんですけども、こちらのほうにですね、歯科訪問診療につきまして非常に人数等のですね、区分において診療の時間とか行為、非常に違いが見られております。適正化の視点からすると非常に重要であるということを改めて指摘をしておきたいというふうに思います。最後に、訪問口腔リハビリとかですね、あるいは在宅療養支援歯科診療所について、先ほど安藤委員からもコメントがありましたけども、積極的ですね、まず地域のニーズに応えていこうという意識から変えていかないと、評価だけでですね、提供が進んでいくのかというのは少し、若干疑問を感じております。特に、先ほどコメントありました在宅療養支援歯科診療所につきましてはですね、開設数そのもは決して多いというふうには認識をしておりませんので、先ほど、緩和はないよというコメントがありましたけども、より厳格化する必要があるんではないかというふうに考えております。以上であります。
二号委員コメント④
在宅支援歯科診療所なんですけれども、機能に応じて役割をしっかりと担っていきたいということで、在宅医療を推進していくということを論点に考えてはおりますが、しっかりと役割の中でも、1と2という機能、先ほども申しましたけれども、役割分担がございますので、そういったところで裾野を広げて、しっかりとニーズに応じた対応をしていきたいと考えておりますので、よろしく、ご配慮のほど、お願いしたいと思います。以上でございます。