ー「栗田ですけど、今よろしいか」
ー「なんや。ナポリタン食うとる。伸びるからまた後でよろしいか」
ー「何ゆーてるんや。今日は1回目のFAXくる日やないか」
ー「あーそーかー。で、どないやったんや。ヒット率」
ー「ゼロですわ、ゼロ。ゼロとか、逆に難しいでしょ」
ー「笑、せやな。それはそれで難しいな笑」
ー「笑ってる場合じゃないんですわ。あのまひ先輩、あの人にレセ絞ってもらったんですけど、ほんまに大丈夫なんやろか」
ー「あー、大丈夫じゃないからヒット率ゼロなんやろなー」
ー「なんすか、その大丈夫じゃないとか。もうね、僕は失敗は許されへんのですわ。早よ来てくれませんか」
ー「もー切ってよろしいか。マズなる、ナポリタン伸びて」
電話越しに栗田先生が怒っているのがわかる。
発狂しているのだろう。オモロい、もっとキレろ。
キレてる姿を見てみたい。
ー「どーしたらエエんですかー」
ー「どないもこないも、指導対象月、調べて、そこのレセプト出してもらってよろしいか」
ー「分かったから、早う来てくださいや」
ー「大丈夫や。指導対象カルテは逃げへん。安心しい」
電話を切った。
須藤がニヤニヤしはがらナポリタンを食う。
「シゲやん、ちょっとイジメすぎやでー」
「アホいえ、ナポリタン、食いたいゆーたのスドちゃんやないか。スドちゃんが全部悪いわ」
須藤がナポリタン食いたい、言うてから、行きしなの途中で小汚い喫茶店に入った。せっかくのナポリタンっていうのに栗田センセからの電話や。
「で、なんて」
「ヒット率は100パーやから、ゆっくりお茶でもすすってから来てください、ゆーてたわ」
「ホンマか、シゲやんも悪いなー」
須藤がお冷やをたのむ。
ここのお冷やは氷が入ってないから生ぬるい。
生ぬるいせいか、塩素の匂いがして臭い。
たしか大阪はオゾンで浄水しているはずだ。なのに塩素臭いということはきっとこの建物の配管が古いのだろう。
「そういえばな、シゲやん。この前、おれ、ラ·メの沙織ちゃんと同伴したんや」
「おー、この前、天王寺の先生に連れてってもらったところか」
「せやせや、あそこのママや」
「で、同伴ってどこ行ったんや」
「ジャンジャン焼きや、新世界の」
「なんや、あんなベッピンなママさん連れて、そんなB級グルメ食うたんか。怒られへんかったか」
「怒られへん。それどころかな、『酔うた』とか言いよる始末や」
「ええやんけ。で、どないしたんや」
「どないもこないもあるかいや。酔い覚ましに、そのあと横の動物園デートや」
「天王寺動物園か。しょーもない。今から出勤や、ゆーのにハイヒールで動物園を引きずり回されたらかわいそうやないけ」
「そーや。でな、案の定、『足が痛い。靴ずれ起こした』いいよる。だからな、休憩しよか、ゆーて横のラブホテル街に連れてったたわ」
「悪いなー、スドちゃん。で、オメコしたんか」
「それがな、バンドエイド買うてきて欲しい、言いよるから、天王寺で薬局を探し回ったで。今日びのバンドエイドも高いな。フツーのとちゃうで。エエやつや。それ買って行ったらな、もぬけの殻や。凄十も2本も飲んだゆーのに」
「そら、そんなB級グルメ食わされて、動物園なんかに連れてったら、そら帰りよるやろ」
「俺としてはええプランやと思うてたんやけどな」
「あのな、スドちゃん。『酔うた』『靴ずれ起こした』という女にええ奴おらんよ。沙織ちゃんはやめとき」
「せやな」
そうこうしてるとまひから電話がかかってくる
ー「しげたー、あんた今どこにおるん」
ー「スドちゃんとナポリタン食うとる」
ー「栗田せんせから電話かかってきて、早よ来てゆーのにいっこも来ーひん、ゆーて怒っとるよ」
ー「知ってる。わたしのせいでヒット率ゼロや。って怒られたわ笑」
ー「せやろな、ワシにもブチ切れてたわ。今ごろブチギレすぎて鼻血でも出してるんちゃうか」
ー「おもろーい。みに行こ、みに行こ。わたしも行くー」
ー「かめへんけどな、あんた、笑いなや。笑うのはなしやで」
ー「わかった」
真面目な声でゆーときはわかっていない。
きっとどこかで笑かしてくるに違いない。
ー「とりあえず、栗田センセのところに集合や」
ー「わかった」
「だれや」
さっきまでケラケラ笑ってた、須藤が真面目な顔になってる。
「だれって、まひちゃんや」
「なんて」
「ウシガエルの話、えらい怒ってたわ」
「うそや。西園寺ちゃん、ゆーたんか」
「ええやん、また破れちょうちんにでもされたらよろしいやん」
そういって店を出た。
