≪その講師はな、一代で大繁盛の居酒屋を作り上げ
た、ヤリ手の経営者やったんや。≫
「有名な全国チェーン展開しとる社長さんか?」
≪いや、全国規模ちゃう。ある地域で数店舗だけな
んやけどな、繁盛っぷりがフィーバーして花びら大
回転なんや。≫
お前はパチンコ屋か風俗か、ややこしい。
≪要するに、数カ月先まで予約が取られへん店って
ヤツや。≫
「なるほど、お客さんが引っ切り無しに訪れるんや
な。でもそんな飲食店、全国各地にあるやないか。」
≪と思うやろ?ところがそこは、独自の経営哲学で
運営されとったんや。≫
「独自の?他と何が違うんや?」
≪まあその前に、その講師と行ったデモンストレー
ションを教えたるわ。≫
「何のデモや?眞子様の結婚反対デモか?あ、もう
眞子【様】ちゃうか。眞子【さん】やったな。」
≪そんなんどっちでもエエわ、いちいち細かいチン
カス技官が。言葉尻捉える事しか考えてへんのか?
てか何で、小室ファミリーが出てくんねん。あんな
罰ゲームみたいな姑ちゃう。
神聖なオーリングや。≫
「オーリング?」
≪せや、まずは両手をハンズアップしてくれるか。≫
友人に言われるがままハンズアップした。人から
ハンズアップを指南されたのは、バスケのディフェ
ンスしとった時以来や。
なんか、素敵やん。
≪そして、両手の人差し指を組ませてくれるか。≫
友人に言われるがまま、自分の指を絡ませた。
なんか、AV男優の練習みたいや。
≪そして、おれは【できない!】て連呼してくれる
か。≫
友人に言われるがまま連呼した。
「できないできないできないできない・・・」
何か、めっちゃ惨めな気持ちになるんすけど。
するとその矢先、友人が力を込めてオレの指を
引き離しにかかってきた。
「何すんねん、いきなり?」
≪これがオーリングの真髄や。≫
「あぁ?」
≪じゃあな、もう一回指を組んでくれるか。≫
「なんでやねん、イヤじゃ。」
≪まあまあスドちゃん、騙されたと思って。≫
・・・すでにめっちゃ騙されてる気がするんやけど。
そう思いつつオチを見てみたい気もするので、今度
は加藤鷹のように指を絡ませた。
知らんけど。
≪じゃあ次は、おれは【できる!】て連呼してくれ
るか。≫
「できるできるできるできる・・・」
これはこれで、惨めな気持ちになってきたで。
すると今度は、友人が思いっきり力を抜いた状態で
オレの指を引き離しに掛かってきた。
こんなフェザータッチで、指が離れる訳がない。
≪どや、これがオーリングの真髄や。≫
「だから、これのどこが真髄やねん?」
≪前向きな言葉を発する事によって組ませた指が
外力を強く掛けても離れなくなる。逆に後ろ向き
な言葉を発する事によって指が簡単に離れる様に
なる、て寸法や。≫
「んなもん、お前のサジ加減一つやんけ。
おちょくるのもエエ加減にせえよ?」
≪でも実際そうやったやないか。おれを信じてくれ
れば、もっと神秘の力を引き出せるようになるで?≫
「いつからお前は詐欺師になったんや?インチキが
服着て歩いとるみたいやで。」
≪誰が詐欺師や。エエか、本題はこれからや・・・≫
