ある開業医の話

自己啓発セミナー潜入記・その⑤

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≪知覧は特攻隊の故郷みたいなもんでな。我が国の

ために散っていった兵士、いや、英雄の気持ちに触

れる事が出来る大和魂が鎮座した場所やねん。≫

 

 

「長渕剛みたいな事言うなや、完全にアッチ方面やないか。」

 

 

 

ヨ~ソロ~~~ヨ~ソロ~~~

 

 

 

≪アッチ方面、てどっち方面や。おれが何を言いたいか分かるか?≫

 

 

「さっきから、ちょっと何言ってるか分かんない。」

 

 

≪全く・・・お前みたいなヤツにこそ徴兵令が必要

や。日本はいつから、こんな軟弱な国になったんや!≫

 

 

完全にアッチ方面の目をしている。ライトなドM

やないか、面倒臭い。

 

 

 

「で、結局そこからどういう話に繋がるんや?」

 

 

≪特攻隊員がどういう気持ちで散っていったか、

お前は知っとるか?≫

 

 

「お国のためにこの命捧げます。か?」

 

 

≪それもある。しかし戦後、海外から自爆テロ扱い

されるような事してまで彼らが本当に守りたかった

ものは、一体何だったのか?≫

 

 

「何か【永遠のゼロ】でも同じような事、言って

なかったか?」

 

 

≪ちゃ、ちゃう。い、今は関係あれへん≫

 

 

 

なるほど、ちょいちょいパクっとるんやな。

 

 

目の前の相手のリアクションの変化で、状況を的確

に分析できるのが技官や。まさしく下手な小細工は

通用せん、てヤツやで。

 

 

被指導者の先生方はお気を付けて。

 

 

 

「だから、何を守りたかったんや?」

 

 

≪大義はお国のためや。しかしその実・本音は、

これからお国で生きていく自分の家族や。

家族こそ、最も守りたい存在やったんや。≫

 

 

≪だから辞世の句は家族に当てたものがほとんどや

、てな。率先して特攻しに行った訳じゃない。

愛する家族のために、自分を犠牲にしたんや。

究極の自己犠牲やで。≫

 

 

・・・【永遠のゼロ】にそのような内容が書かれて

いた事は、口に出さないでおいた。

 

 

 

「だから結局、それで何を言いたいんや?」

 

 

≪鈍いヤツや、普段から自己チューなんやろな。

だから技官には、ロクな噂が立たんのや。≫

 

 

「余計なお世話や、こっちも仕事やねん。

だから何や?」

 

 

≪誰のために生きるか?を常に問え、て事や。その

マインドさえ持っとけば、【今この瞬間】を疎かに

せずに生きていける。

利己主義やない。利他主義を胸に生きていくんや。≫

 

 

 

なんか稲森和夫も混ざってきたで。オレも自己啓発

本を読み漁った経験があるが、結局はたいてい同じ

内容が、言い方変えて書かれとるだけや。

 

んなもん分かっとるわ、て。

 

 

要するに、パクって違う言い方しとるだけや。

 

 

 

しかし心が弱っている人がそういう本見たり、そう

いうセミナーに行けば、どっぷりハマる気持ちは分

かる気がするで。

 

 

でも、カモにされてるだけって自分で気付けば、

むやみに他人に依存する気なんか無くなるはずや。

 

 

XJAPANのTOSHIがエエ見本やないか。

 

 

知らんけど。

 

 

 

哲学書みたいに【そりゃそうでしょうね】、て内容

をやたら難しく書く事で、それっぽく見えるような

話を安易にすんなり信じてしまうのだけは、止めた

方が良さそうや。

 

 

 

目の前の友人の熱弁を聞きながら、そう思った。

 

感動したふりだけしながら。

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