悪夢の院内運動会

悪夢の院内運動会⑪

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我ながら滞りなく準備が完了した。そして運動会前日、診療も終わり帰路につく。

今日に限っては、明日に備えて皆早く帰るよう院長から指示が出た。

ニヤつきを一切隠し切れていない笑顔を見る限り、明日をいかに心待ちにしているかが良く伝わってくる。運動会も打ち上げも喜び組として臨まなければならないオレの気持ちとは正反対やで。

 

まあせっかくここまで準備したんや、明日は存分に楽しんでもらいましょ。

 

 

 

・・・新しい朝がきた。寝覚めが良過ぎるくらいコンディションが良い。何やっても上手くいきそうな清々しい気分になる。

 

しかし、こういう日は得てしてどこかで落とし穴が口を開けて待ってるもんや。

最悪の状況を想定して楽観的に備える。気合いを入れ、モーニングルーティーンをいつも通りこなし、いざ戦場へ向かう。

 

開始は13:00からだが、各院長のスタイルで集合時間よりも早く揃うスタッフばかりだ。遅刻したら処刑やからな。

 

従って、11:00からオレの戦闘開始や。最寄駅の出口に立って、体育館に向かう道筋を書いたプラカードを掲げて皆の先導を行う。食いだおれ人形のコスプレをしながら。これも院長の指令や。

 

いや、何の罰ゲームや。通行人にクスクス笑われながら、知らん顔をして仕事を遂行する。今日一日、辱めに耐えるというのがオレの最大のミッションかもな。

 

なんか、あいのりの新メンバーになろうとしている気分やで。知らんけど。

 

 

そして続々と見知ったスタッフ達が前を通る。オレを見てクスクス笑いながら。

 

お前らが笑ってどないすんねん。

 

打ち上げでどんなお仕置きをしてやろうかとシミュレーションしながら、時間通りに、いや、予定よりずっと早く到着するスタッフを眺めながらふと思いを巡らせる。

 

時間に正確なのは、日本人が世界に誇る性癖や。

 

 

スペイン人なんか、遅刻するのが当たり前でだ~れも時間通りにこーへん、て城彰二が言っとったな。

 

 

昔行ったマドンナやジャミロクワイのコンサートも、予定より一時間以上遅れてスタートやったからな。おかげでテンションだだ下がりや。

 

あいつら、客を舐め過ぎやろ。

 

 

そして大方全員を案内できたところで、オレも体育館へと向かう。食いだおれ人形のコスプレをしながら。

 

自転車に乗っている警察官から訝しい視線を浴びるが、こういう時は堂々としておけばいい。視線を逸らしたり、オドオドしたりすると職務質問へ直行や。

 

ちなみに今までの人生で一度も職質を受けた事が無いのが、オレの自慢や。

 

 

あ、ほとんどの人がそうか。ホンマ堪忍やで。

 

 

そしていよいよスポーツセンターへ到着や。なんかマンギョンボン号に見えてきたで。

 

逃げたい気持ちをのみ込んで、いざ特攻や。

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