悪夢の院内運動会

悪夢の打ち上げ③

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<カンパ~~~イ!!!>

 

『ウ~~~イェイ!!!』

 

 

そこかしこでフィーバーしている。こういう宴会の時は、体育会系のノリのメンバーがいると助かる。勝手に盛り上げてくれるから、そういった点で幹事として気を回す必要が無いからだ。

 

しかしそれも比率によりけりや。これだけ体育会系の比率が高いとだいたいがむさ苦しいだけ、という展開が多いからだ。

 

 

しかし今晩に至ってはそれに反して女性スタッフも、たいていがパリピや。こういった飲み会は楽しい反面、大ケガした時のリスクが半端ないのも自身の人生で経験済みや。

 

 

このようなシチュエーションでは、適度に自分の存在をアピールしつつその存在を消すという作業を繰り返す事が、心身ともに自分をディフェンスする最良の方法だ。

 

 

 

知らんけど。

 

 

 

あえて下戸のフリをするのも一手だが、オレはイケる口である事がバレているのでそのメソッドはここでは使えない。よっしゃ、という事で。

 

 

「ルネッサ~~~ンス!」

 

 

まずはアピールタイムや。しかし、あれだけノリノリ紀香だった空気が一瞬にして凍りついた。

 

 

 

〔須藤先生、古いっすわ~!〕

 

まずは女性スタッフに攻撃される。

 

 

<はい、粗相~!これは責任問題に発展です!!>

 

院長がすかさず畳みかける。

 

 

 

『スドちゃんの、ちょっと良いとこ見てみたい!それイッキ!イッキ!!イッキ!!!』

 

 

しもた、ハメられた。周りの喜び組がオレを煽る。オレと同じ穴のムジナじゃないんか、裏切り者が。仕方なしにイッキをかましてグラスを空ける。

 

 

 

今の時代、完全なるパワハラからのアルハラや。これからの世代には恐らく全く通用しないノリだろう。まあ学生時代に自分も楽しんでいた節はあるが。あの時代に、もっとハラスメント問題を盛り上げて欲しかったわ。

 

窮屈な世の中になったとはいえ、時代に合わせて自分もアップデートさせなアカンで。

 

 

それぞれのノリでそこかしこで盛り上がりを見せている。この時点で打ち上げは成功や。

 

これで後はこの酔っぱらい達がどうフィニッシュするか、知ったこっちゃない話やで。

 

 

と考えていると、院長が横へ座った。

 

 

 

<良い仕事してますね~。と言いたいとこやけど、飯がイマ一つやな。≫

 

「なら自分で探したらよろしかったやん。1ミリも動かんヤツ程、文句付けたがるからな。」

 

と言いたいところだが、その言葉をグッと呑みこんだ。口に出したら自分の価値を下げるだけやからな。

 

 

<皆フィーバーしとるやないか。他所の医院のスタッフ同士入り混じって、そこら辺で花びら大回転やないか。>

 

・・・風俗じゃないんすから。

 

 

 

<じゃあグチャグチャになる前に、運動会の表彰式しとこか。>

 

 

これが最後の指令やな、と思いつつ各部門の表彰式を行った。お愛想で喜んではいるものの、誰も渡された表彰状やメダルを見ようともしない。

 

渡した瞬間にしまわれる名刺のようだ。まあエエわ、こういった事務的な下働きが日の目を浴びる事は無いものやしな。

 

 

と思っていると、ただ一人だけそれらを愛でてくれる他所のスタッフがいた。先程華麗なるダンスを魅せてくれた佳子さまだ。

 

その本心はどうでも良いが、やはりずっとモテ人生を歩んでいるせいか他者への配慮、つまりは自分の魅せ方を分かっている

 

どう振る舞えば相手が喜び自分の価値を高めるかを・・・

 

表向きは相手の嫌がる事を決してしないという事を・・・

 

 

個別指導でも、決して媚びる必要はないが技官や事務官を喜ばせるような言動が出来れば、未だ見た事がない【概ね妥当】が発出されるかもな。

 

 

知らんけど。

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