悪夢の院内運動会

悪夢の打ち上げ⑧

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〔お前ら、どういうつもりや?カラオケにも行くってあらかじめ言っといたやろが!〕

 

 

B先生がキレた時の中国人並みに、けたたましい怒鳴り声を辺り一帯に轟かせている。

 

 

 

「やめて欲しいですね恥ずかしい、仮にも歯科医師ですよ。」

 

『仮ちゃう、真性の歯科医師や。』

 

 

なんか技官みたいや、どーでもエエ言葉尻にいちゃもん付けるところが。

 

 

 

《でもいんちょ、一次会の飲み会には全員参加しましたよ。さすがにカラオケは自由参加でエエんちゃいますか?》

 

 

スタッフも食い下がっとる。

 

イヤだから、いんちょって呼ぶな。

 

 

時代を先取りしたスタッフや。今時何でもかんでもホーケー強制パンツ穿かせたら、スタッフは定着せんからな。

 

 

 

〔最後まで参加する事に意味があるんや!この意味が分かるか、お前らに?〕

 

B先生が、稲葉浩志ばりにシャウトし出した。

 

 

 

「こりゃあきませんわ、他人のフリしてこの場を去りましょ。こっちまで恥ずかしくなってきますよ。」

 

『言われんでも、他人のフリはしとる。話振られたらスタコラ退散できるようにスタンバっとけ。』

 

「何かあったら止めに入るんちゃうんですか。やっぱりただの偽善者じゃないすか。」

 

『まずは自分を安全圏に置く事が重要や。そこから他人をレスキューできる余裕が生まれるんや。』

 

「生保が募金なんかすんな、てヤツっすか?」

 

≪そういう事や。≫

 

「とんだ偽善者じゃないっすか。」

 

≪戦国武将と言わんかい呼ばんかい。あいつらをよく見てみい、主君をコロコロ変えようが恥知らずな策を練ろうが、結局は要領良く立ち回った武将が末永く行き残っとるやないか。勝てば官軍なんじゃ!≫

 

「先生は、ただの卑怯モンですけどね。」

 

『お前に言われたないんじゃ!』

 

 

煽るのはこのくらいにしておこう。

 

そうこうしているうちに、遂にB先生のリミッタ―が完全に外れた。

 

 

 

〔もうエエわ、帰れ!全員帰れや!〕

 

 

とその日一番の魂の叫びをかました。

 

 

アカン、どんどん恥ずかしくなってきた。

 

ふと気付くと、オーディエンスもどんどん増えてきた。

 

どうやらB先生も恰好エエとこ見せたかったみたいや。

 

 

 

「一周回ってカッコ悪いですよね。」

 

『でも、ゆーたった感が凄いやんか。おれ、イケてるやろ?的な。このおれにはB先生の気持ちが良く分かる。』

 

 

A先生が半笑いで言っている。

 

それを聞いたスタッフは、《はい分かりました》、と言って全員そそくさと帰っていった。

 

 

 

「思いっきり想定内ですよね。」

 

『B先生にとっては想定外やったみたいや。見てみぃ、口あんぐりして白目剥いとるやないか。』

 

「まさか帰るとは思ってなかったんでしょうね。何にせよ、もうそういう時代じゃないって事ですかね。」

 

『そういう事や。周りから失笑が漏れとるし、とんだパンダやで。』

 

「ピエロでしょ。これがきっかけで、みんな辞めなきゃ良いんですけどね。」

 

 

 

後日A先生から聞いた話だが、案の定というか何というか、その翌日には全員揃って退職したらしい。想像以上に大変やった、との事だ。

 

 

なぜならA先生の医院に、スタッフ派遣の要請があったからだ。

 

その話を聞いた際、

 

 

「で、派遣したったんですか?」

 

と質問したところ、

 

 

『する訳ないやろ、テキト―こいて断ったわ。巻き添えくらうだけやないか。』

 

との答えが返ってきた。

 

 

言っとる事とやっとる事が違うやないか。

 

 

 

・・・全く。

とんだ偽善者、いや、詐欺師やで。

 

 

知らんけど。

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