悪夢の院内運動会

悪夢の打ち上げ⑬

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<おう、幹事がエエ身分やのう?>

 

酔っ払っているせいで、院長がいつも以上にクンロクをかましてきた。

 

 

<盛り上げ役が、こんなところで座って休んで、どないすんねん!>

 

興奮し過ぎて口から泡が出ている。叫んだ瞬間、それがオレの顔に飛んできた。おっさんの泡、えんがちょ~

 

今すぐにでも違う泡に浸りに行きたいもんやで。

 

 

知らんけど。

 

 

 

<他のスタッフが手持無沙汰やないか、どないすんねん!>

 

・・・知らんがな。いちゃもんは、あの勤務医達に付けてくれや。

 

いや、むしろ院長がおもてなししたらよろしいですやん。

 

 

当然こんな事を口に出すと、面倒臭いだけの話では無くなるので、しぶしぶ席を立つ事とした。

 

 

・・・しかし、何をすればエエんや?佳子さまはまだお見合いパーティーの真っ最中や。

 

余った女性陣は殺気立っとるし、手の施しようが無いように感じるが。

 

 

すると院長が、<お前もデュエットせんかい!>と煽り運転してきた。

 

「あぁ、佳子さまとですか。」

 

 

しゃーなしに眼前のステージに乱入しようとしたところ、院長がグィっとオレの肩を引き寄せた。思わずチューしそうになったわ。とっさに上島竜平が頭をよぎったで、合掌。

 

 

 

「ちょ、待てよ!」

 

<キムタクぶるな、このユダが!一体どこ行くつもりや。>

 

「だから、佳子さまとデュエットしに行くんですやん!」

 

<誰があの娘とせえ、て言うたんや。>

 

「?」

 

<他のスタッフに決まっとるやないか。>

 

「何の罰ゲームですか?」

 

<罰ゲームちゃうわ、幹事としては当たり前やろ。早よ行かんかい!!>

 

 

どんだけ煽ってくんねん。一昔前の体育会系は皆こんなんばっかりや。後輩は奴隷や。

 

今時こんなんやってたら、若手にとんずらこかれるでけやでしかし。

 

 

知らんけど。

 

 

 

いくらゴネたところで仕方ない。とりあえず指令を遂行すれば満足するんや、さっさと相手決めて済ませよ。

 

しかし佳子さまの直後なだけに、ある程度のタマを用意せんと相手に恥かかせるだけや。

 

 

そう思い、辺りを見回す。

 

 

 

しかし、何かの空気を察したのか、気付けばスタッフ皆伏し目がちになっている。

分かるで、オレも当てられたくない時は同じ様な角度になってたから。

 

嫌な事は、無理せんでエエんや。どーせ誰の記憶にも残らへんもんやから。

 

 

 

・・・何者かの視線を感じた。ふと見ると・・・視線の主は愛子さまや。

 

 

いつのまにか愛子さまが、ポツンと一軒家や。

 

 

周りのスタッフが気を使って、オレ達二人の空間を作ろうとしている。

 

 

いや、オレ達を生贄にしようとしている。

 

しかし、愛子さまはまんざらでも無い顔をしている。

 

佳子さまとは180°違う。いや、逆にこれがベストか?

 

 

とりあえず、オレにとっての悪夢の打ち上げが始まった・・・

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