<おう、幹事がエエ身分やのう?>
酔っ払っているせいで、院長がいつも以上にクンロクをかましてきた。
<盛り上げ役が、こんなところで座って休んで、どないすんねん!>
興奮し過ぎて口から泡が出ている。叫んだ瞬間、それがオレの顔に飛んできた。おっさんの泡、えんがちょ~
今すぐにでも違う泡に浸りに行きたいもんやで。
知らんけど。
<他のスタッフが手持無沙汰やないか、どないすんねん!>
・・・知らんがな。いちゃもんは、あの勤務医達に付けてくれや。
いや、むしろ院長がおもてなししたらよろしいですやん。
当然こんな事を口に出すと、面倒臭いだけの話では無くなるので、しぶしぶ席を立つ事とした。
・・・しかし、何をすればエエんや?佳子さまはまだお見合いパーティーの真っ最中や。
余った女性陣は殺気立っとるし、手の施しようが無いように感じるが。
すると院長が、<お前もデュエットせんかい!>と煽り運転してきた。
「あぁ、佳子さまとですか。」
しゃーなしに眼前のステージに乱入しようとしたところ、院長がグィっとオレの肩を引き寄せた。思わずチューしそうになったわ。とっさに上島竜平が頭をよぎったで、合掌。
「ちょ、待てよ!」
<キムタクぶるな、このユダが!一体どこ行くつもりや。>
「だから、佳子さまとデュエットしに行くんですやん!」
<誰があの娘とせえ、て言うたんや。>
「?」
<他のスタッフに決まっとるやないか。>
「何の罰ゲームですか?」
<罰ゲームちゃうわ、幹事としては当たり前やろ。早よ行かんかい!!>
どんだけ煽ってくんねん。一昔前の体育会系は皆こんなんばっかりや。後輩は奴隷や。
今時こんなんやってたら、若手にとんずらこかれるでけやでしかし。
知らんけど。
いくらゴネたところで仕方ない。とりあえず指令を遂行すれば満足するんや、さっさと相手決めて済ませよ。
しかし佳子さまの直後なだけに、ある程度のタマを用意せんと相手に恥かかせるだけや。
そう思い、辺りを見回す。
しかし、何かの空気を察したのか、気付けばスタッフ皆伏し目がちになっている。
分かるで、オレも当てられたくない時は同じ様な角度になってたから。
嫌な事は、無理せんでエエんや。どーせ誰の記憶にも残らへんもんやから。
・・・何者かの視線を感じた。ふと見ると・・・視線の主は愛子さまや。
いつのまにか愛子さまが、ポツンと一軒家や。
周りのスタッフが気を使って、オレ達二人の空間を作ろうとしている。
いや、オレ達を生贄にしようとしている。
しかし、愛子さまはまんざらでも無い顔をしている。
佳子さまとは180°違う。いや、逆にこれがベストか?
とりあえず、オレにとっての悪夢の打ち上げが始まった・・・
