A先生にイケズをしたせいか、お腹が空いてきた。
思い返せば、若い頃は新陳代謝が活発やった。色んな滅茶苦茶が出来た。今や、あの頃と同じペースで飲み食いするとすぐさまトイレに直行や。
若い頃の苦労は金を出してでも買え、とはよく言ったもんやで。
部屋の中も一段落ついたように見える。皆、より一層疲れた表情になっている。
よっしゃ、隙ありや。トイレに行くふりしてラーメン食べにいこ。
抜き足差し脚で部屋を出ようとしたところ、
{須藤先生、どこに行くんですか?}
と愛子さまが的確なツッコミを入れてきた。
こういう場にだいたい一人はおるもんや、いらん気を利かすヤツが。
「お腹の調子がすこぶる悪いんで、お手洗いに行ってきますわ。」
<お、ピッピですか。これがほんまの下痢ラ豪雨や!ギャハハハ・・・>
院長達のオジン臭い笑い声が部屋にこだまする。みんな気を使って空笑いしている。ダシにされたオレの気持ちをどうにかして欲しいもんやで。
そう思いつつも、部屋を出る。
・・・しかし、見られた。思いっきり見られた。このままラーメン屋に行ってエエもんか?一抹の不安がよぎる。
しかし、や。酔っ払ってそこかしこで居眠りしてしまう話は、枚挙に暇がないあるあるネタや。
どっか外で寝てしまった体にして、ラーメン食べに行くか。
そう腹を括り、外に出る。
夜も更けた時間帯だが、まだまだ街は賑やかだ。
欲望の街とはよく言ったもんやで、それぞれの思惑が渦巻いたカオスの様相を呈している。
知らんけど。
しかし中々スリルがあるで、イベントを途中で抜けるなんて。合コンでもそんなんした事無いってのに。
ひとまず店を出て、長堀通りを目指す。地図上では、店を挟んで道頓堀とは逆方向に当たるエリアだ。つまり、今回の目的地は金龍ラーメンではない。
長堀通り沿いにある希望軒だ。ここも、酒を呑んだ締めには打ってつけのラーメン店だ。とどのつまりが、ラーメンなら何でもエエって事か?
知らんけど。
店に到着し、ラーメンとチャーハンとギョーザを頼む。アカン、さらにめっちゃ腹減ったきたで。
店内には、オレと似たような境遇と思われる客がすでに数名座っている。
皆一様に、背中に哀愁を漂わせているように感じる。
背中で語るとは良く言ったもんやで。正面から見ていくら大人びていても、その背中を見ればエラい子供のオーラが出ている人物を見たのは、一度や二度では無い。
若者には気を付けなアカンで、色んな意味で。
知らんけど。
そんなどーでもエエ事を考えながら、ラーメンをすすった。