〈本日は私の粗相により、皆様に多大なるご迷惑をおかけ致しまして・・・〉
店長の公開処刑が始まった。詳細を聞くと、どうやらあちら側にも落ち度があったようだ。
しかしそれにしても、店長がババを引いた事に変わりは無い。まあ、もうしばらくの辛抱や。
なぜなら、院長たちはヤカラだけどチンピラじゃないからだ。アホだけどバカじゃない、てレゲエバカと結婚した窪塚洋介が言ってたけどな。
知らんけど。
店長の口上が終わり、院長達の溜飲も下がったようだ。怒りに満ちていた表情も、幾分か柔らいできたように見える。
しかしそれにしても、客商売は大変やで。酔っぱらいの絡み酒ならなおさらや。まあ、ガチのキチガイを相手する事に比べれば天国みたいなもんやけど。
「これで落とし前が付きましたね。部屋も移動できたし、怪我の功名じゃないっすか。」
<アホゥ、これで終わりやと?>
そういえば、まだ店長の手には並々注がれたビールジョッキが握られている。
するとどこからともなく、
≪て・んちょ!て・んちょ!!て・ん・ちょ~!!!≫
と、煽りが入った。その大半は、女性スタッフだ。こういう時はオンナの方がテンションが高く、タチが悪いもんやで。
なぜなら、いざという時に男を盾にできるからだ。
酔いが回ったせいでそこまで頭が回っていないのか、男性陣もつられて煽り出した。
<よっしゃ~!もう一杯いこか!!>
完全に昭和の体育会系のノリになっている。店長が酒イケる口やからエエけど、急アル起こして運ばれたらどないすんねん。一夜にして犯罪者やぞ。
そう察し、すかさず院長の耳元でささやいた。
「この部屋に監視カメラしかけられてたら、アウトちゃいますか?これ。」
<アホ抜かせや、店長が自主的に呑んどるだけやんけ。>
なんか色々アウトな事を言っているような気がする。しかしさすがにヤバいと感じたのか、そそくさと店長を解放した。
しかし去り際の哀愁が忘れられへんで。【お客様は神様です】精神も、ここに極まれりや。
知らんけど。
「院長、このまま何も無ければエエですね?」
<何がや?>
「いや、だいぶハッチャけてましたやん。コール付イッキ飲み強要罪で逮捕されるんちゃいますか?いや、円陣恫喝罪かな?」
ありもしない罪状を並べてみる。
<そ、そんなん知らんし・・・ポニョ。>
崖の上か。
「泡吹いとる場合じゃないですよ。そんな事でビビるんやったら、最初からクンロクかまさんといて下さい。」
<そ、そんなん知らんし・・・クネクネ。>
近未来警察072で、とんねるずにセクハラされてた無名時代の松嶋奈々子か。
しかし店長の芸のおかげか、ようやく平穏な空気が戻ってきた。しかしここから、もうひと暴れや。とは言っても、ノリノリ紀香の続きやから、エラい平和に感じるで。
これでようやくお開きになるわ、と安心したのも束の間・・・