悪夢の院内運動会

悪夢の院内運動会③

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『う~ん、最近はあんまり体動かしてないかな~。』

 

 

確かにほぼ全員、運動不足が具現化したように体がたるんでいる。

 

 

 

〈運動会、せーへんか?〉

 

 

『運動会?』

 

 

〈そうや、スタッフ全員集めてな。合同院内運動会や。〉

 

 

え?何ちゅう事言い出すんすか、院長。

 

 

 

『おいおい、一体どないしたんや・・・?』

 

 

皆一様に戸惑いを隠せない、といった表情を浮かべている。

 

 

 

しかしまるでこれが想定内と言わんばかりに、院長がプレゼンを始めた。

 

 

簡単に言うと、完全に体育会系のチャートや。

 

いくら何でもこれはしんどいで・・・

 

 

 

『良いじゃないっすか!』

 

 

一人の先生が声を上げた。ウチの院長の大学・部活

の後輩だけに頭が上がらない舎弟のようなポジションの先生や。

 

この先生も、イエス以外の答えは許されないので、

致仕方ない展開か。ノー、て言ったらシバかれるん

や。高須クリニックみたいに。知らんけど。

 

 

すると堰を切ったかのように賛同の声がその場を支

配した。全員年齢的に後輩の先生ばかりだから、反

対意見を言えない状況なのだろう。

 

 

・・・ウソでしょ?ヤバい、このままではエラい事

になるんちゃうか・・・?

 

 

 

そう思い、ある一人の先生を見た。誰かを懇願する

ようにガン見したのは、これが初めての経験かもし

れない。というのも、この中では院長の唯一の同期

で、このスタディーグループのファウンダーの一人

だからだ。何よりも、院長に対等の立場で意見でき

るからな。

 

 

この先生がNOを突き付けてくれれば、あるいは風

向きが変わるかも知れない。

 

 

と思ったのも束の間、『エエんちゃうか?楽しそうやん。』

 

 

 

・・・儚い夢を見たで。こうなったらもう後戻りは不可能や。

 

 

 

〈よっしゃ!皆がそんなに熱い気持ちで嬉しいわ!〉

 

 

思わずこの場にいる全員の心の声を聞きたくなった。

 

 

 

〈良かったな、須藤!〉

 

 

「はい!嬉しいっす!」

 

 

オレが言い出しっぺみたいになってないか?

 

しかしこんな事を言い出すのは院長しかいない事は

、皆理解している。

 

 

まあ予想していた斜め上の展開になっているであろ

う事は、皆の顔を見ればおおよそ察しがつく。

 

 

 

ただ、こうなればもう腹を括るしかない。

 

 

 

〈なら、まずは日程から決めなアカンな。これには

、一案があるんや。〉

 

 

『どういう案ですか?』

 

 

〈休日にすれば嫌がるスタッフが出てくる。だから

、平日に医院を閉めて業務の一環として開催するんや。〉

 

 

それ以前の問題の様な気がするが・・・

そこまでしてやらなアカンとですか?

 

 

『それがエエですわ、それならやりやすいですね。』

 

 

〈やろ?善は急げ、や。じゃあ今から早速日時を決めよーぜ!〉

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