「待たせたな、産毛ボーイ。」
いんちょ山崎のモノマネをしてみる。
<いや、俺もちょうど今来たところや。>
ウソをつけ。
いや。
ウソをつくな、か。
そんなどーでもエエ事を考えながら、「さっきから飲み歩いとるやんけ」と心の中でツッコミを入れる。
「エラいごきげんさんやないか。今日の診療はどないやってん?」
<今日は元帥モードや。勤務医や他のスタッフへの指導・指示がメインの一日や。お前の方こそ、いきなり下ネタぶっこんできよって。>
「下ネタちゃう、カリスマナンパ師のモノマネや。」
<まあ何でもエエんやけどな、早速店に行こか。>
慣れた足取りで歩を進める。
「よくスケ連れてきとるんか?」
<もっとエエとこや。シティホテルでデイユースして、ワイングラスのシェリーを呑み干しとるわ。で、夜からダブルヘッダーや>
お前は、ハウンドドッグか。
「じゃあ今日は、下町の名店にでも連れてってくれるんか?」
<まあな。付いてくれば分かるわ。>
商店街から道を逸れ、裏路地を通り抜ける。香ばしいフレーバーをプンプン出しながら、多数の飲食店が軒を連ねている。ハシゴするには丁度エエ塩梅や。
そして、【ぷららてんま】のサイドにある、屋台風の店舗群をさらに通り抜ける。
賑やかなエリアを抜け、このままでは住宅街へピットインや。
「まだ先へ行くんか?」
と訊ねた矢先、野崎が歩を止め、<ここや。>とサムズアップした。
お前は、エーちゃんか。
店構えは、隠れ家だけど隠れ家じゃない、隠れ家みたいな雰囲気を醸し出している。アカン、窪塚洋介みたいにラリってきた。
<ここが、今日お世話になる焼き鳥の名店や。>
「お、エエやん。仕事上がりでビールに焼き鳥って、カイジみたいでなんかステキやん。」
とりあえず外観は合格や。好奇心を隠しきれぬまま、入店する。
『まいど、野崎センセ!』
威勢の良い店主が出迎える。ちょい悪ニイちゃんって感じや。内装の雰囲気もエエ。
合格や。
カウンターへと着席する。何を注文しよかな・・・?
と考えていると、ちょい悪ニイちゃんの奥さんだろうか、ふてこい女性が注文を取りに来た。
開口一番、『当店は焼き鳥屋です。最低5本頼んで頂けなければ退店して頂きますが、よろしいか?』
と注文を付けてきた。この上から目線・・・不合格や。
じゃあ焼き鳥を5本頼まなければどうなるのか?試してガッテンしたくなってきた。
手始めに皮、もも、ぼんじりを頼むと・・・もう2本頼むんやろな?という目をしてプレッシャーをかけてきた。
このアマ・・・個別指導やったら再指導やぞ?と心の中でマウントを取っておいた。
我ながら小物感を出してしもたで。
お詫びにあと2本、焦らしながら頼んだるさかい。
さらなる小物感を醸し出しながら、いよいよ本題へと突入や。
