<あれは、ある日の診療後の事やった。最後に退室する俺が、診療室の電気を全て消してアルソックかけようとしたその瞬間や。>
「吉田沙保里が目からビーム発射したんか?」
<伊調さんといい、金メダリストへの仕打ちちゃうで、あのCM。>
「それはどっちでもエエんやけどな、何があったんや?」
<突然電話が鳴り出したんや。>
「電話は突然鳴るモンやろ。」
<真っ暗闇でいきなりやからな、心臓が飛び出そうになったわ。>
「投資の勧誘電話か?」
<いや・・・例のケバ神からやったんや。>
「ケバ神?あぁ、マヒらせたクランケか。」
<だからクランケ、て言うな。織田裕二気取りか。>
「いや、石黒賢気取りや。」
<それこそどっちでもエエわ、んなもん。>
「で、何て言ってたんや?」
<直接電話は取ってないんや。>
「じゃあ、何でケバ神って分かったんや?振り返ればヤツがおったんか?」
<・・・後になってからな。とりあえず、ずっと無視しとったんや。>
「どれくらい?」
<述べ3分くらいやな。>
「ワイルドやん。3分電話鳴らすって、けっこう気合いのいる話やん。」
<せや。そんなん、ややこ確定やろ?だから鳴らすだけ鳴らさせて、ガン無視や。>
「トラブルの臭いがしますね~。だから、何でケバ神って分かったんや?」
<次の日や。>
「次の日?」
<せや。次の日にまたかかってきたんや。>
「また、診療後に真っ暗にしたところへ呪いの電話か?」
<いや、あれは診療開始前の朝礼での出来事や。>
「朝礼?」
<せや、ウチでは朝礼でクレドを合唱して、スタッフが持ち回りで3分間スピーチをしとるんや。>
なんか、どっかで聞いた事ある話やな。
「意識高い系デンタルクリニックやん。」
<せや、一日の気合いを入れる。これ、大事。>
「確かにスピーチは、何度か行うと知らん間に上達しとるけどな。」
<せや。ボルテージMAX状態の受付に、一本の電話が鳴ったんや。>
「別に普通の事やんか。」
<しかし、や。>
「しかしもかかしもあるかい、早よ言わんかい。」
<受話器を取った受付の顔が曇り出してな。声のトーンもみるみる変わっていった。>
「あ、それ。診療中に察知するとドキッとするパターンやろ?」
<ドキッとするだけならエエんや。しばらく話しこんだ後に、院長に代わってくれって言ってきたとの事で・・・>
「まずは受付でウォーミングアップして、院長にブチギレるパターンか。なんか、ステキやん。」
<どこがステキなんじゃ、コラ。とにかく、受話器を取るとな・・・>
やっと面白くなってきたで。
