<ところで須藤、技官になったんやってな?>
技官になってから、何回も聞いたセリフや。
エエ加減、ミニにタコですわ。
とはいえ、また個別指導の相談か?全く、何十年も
会ってない旧友には気を付けろ、てよく言うけどな。
技官になってから、よくこのパターンにお目にかかるんや。
「どこでそれ聞いたんや?まあ、その通りやけどな。」
<色んなところからな。技官ってロクな噂聞かへん
けど、須藤はまるで仏みたいや、て噂が立っとるで。>
電話口からでも、おべんちゃらの臭いがプンプン
する。そもそも普段から技官ってだけで、どこ行
ってもヨイショされるんや。
おかげ様で、本音と建前の区別くらい容易に付く
ようになったけどな。
よくそれを額面通り受け取って調子こいとる技官が
おるけどな、そういうヤツはたいてい人生で一度も
モテた経験がない素人童貞やろう。もしくは生粋の
いじめっ子や。
おっと、これはオフレコやで。
「嬉しい事言ってくれるやないか。」
よっしゃ。今日は、ノセられたフリして攻めていこか。
<で、本題なんやけどな。>
待て待て、お前もガマン汁出し過ぎや。もうちょっと泳がせんかい。
「個別指導にでも当選したんか?」
<縁起でもない事言わんといてや。ちゃう、また別の話や。>
そう言えば、野崎との思い出が一つあったで。
「何や、こないだも個別指導に選定された同級生
から連絡あったとこやから、てっきりそう思った
わ。ほら、昔一緒に芦屋で合コンした時におった○○や。」
<あぁ、あいつか。あの時の娘と結婚したらしいな?>
詳しくは、コラム:【ある開業医の話】にて。
一通り昔話に花を咲かせ、いよいよ本題に入る。
「で、その本題は?」
<なあ須藤。お前さぁ、インプラント打った事ある?>
どこが本題や。卒業して間もない頃みたいな、マウントカウパーを放出してきた。
「え?インプラント?打った事ないし、そもそも詳しく知らんし・・・」
とりあえず知らん振りをしておいた。インプラント
はそれなりに勉強して埋入してきたので自信のある
ネタではあるが。マウントの取り合い程虚しく無駄
な時間は無いからな。
<そうなん?俺はさぁ、月に30本は打ってるで?>
今さら全くもってどうでもエエ自慢話をしてくる。
これはこれで無駄な時間や。さらに放っておくと、
これが延々続くという事はオレも痛い程経験済みや。
「インプラント埋入本数を教えたくて電話してきた
んか?せっかくやけどあんま興味無いから、もう切
ってよろしいか?」
<い、いや、待ってくれ。そんなしょーもない話ちゃうんや。>
たった今、そのしょーもない話で鼻を伸ばしてたのはどこのどいつや。
「さっさと言ってくれへんか?マジで眠たいんやけど。」
<実はな・・・>
