トラブルはいつも突然に

トラブルはいつも突然に~⑥~

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南海の駅舎を出る。今日は一段と日本晴れや。

 

こんな日は、このまま南海電車に乗って和歌山へ

出かけたくなる。

これから繰り広げられるであろう男同士でのむさ

苦しい会話を選択した自分に、若干後悔の念を抱いた。

 

 

御堂筋を逆に進む形で、道頓堀を目指す。

 

するとすぐ右手に三菱東京UFJ信託銀行が見える。

 

 

この当時は、ここから御堂筋を挟んで逆サイの位置

に歌舞伎座があった。

 

 

現在は、その跡地に何とかって名前のデカいホテル

が鎮座しとる。ここのみならず、特にミナミではイ

ンバウンド向けのホテルが、たけのこたけのこニョ

ッキッキのように乱立している。このコロナ禍で経

営はどうなっとるんや?

 

まあ、余計なお世話か。

 

 

 

野崎とその前を通りかかると、一人の老婦人に声を

かけられた。ロマンスグレーってヤツか?見るから

に気品が漂っている、まさにマダムと呼ぶに相応し

い出で立ちや。

 

 

『あのぅ、松竹座ってどちらですか?』

 

 

と道を尋ねられた。チャラ男の野崎に声をかけない

ところが、選球眼の良さを表している。

 

 

「はい、目の前にあるこちらが松竹座です!」

 

 

意気揚々と返事をした。するとその老婦人、

 

 

『これは歌舞伎座や!』

 

 

と、いきなり大阪のオバちゃん丸出しでツッコんできた。

 

 

オレとした事が間違えたで。

松竹座はこれからの目的地、道頓堀の入り口にある方やった。

 

 

 

「えぇと、ここから御堂筋を北上して頂いて、金龍

ラーメンを少し越えたところにある、はり重と靴の

STEP(現在は閉店)の間の交差点を横に走って

いるのが道頓掘でありまして、そこを右に右折して

そのすぐ右側に松竹座があります。」

 

 

『そーか、ありがとう。』

 

 

吐き捨てるように言い放ち、御堂筋を北上していった。

 

 

このババア・・・こんな事やったら、国立文楽劇場

(ここからずっと東側)を教えとくべきやったで。

 

 

 

大阪は、とにかく石を蹴ればこういう輩に当たるっ

てくらい、油断も隙も無い街なんや。せっかくやか

ら、大阪に来た時は本場のノリツッコミを味わってな。

 

知らんけど。

 

 

 

<ぷっ。右に右折って・・・技官もテンパる時が

あるんやな。>

 

 

「やかましわ、あのクソババアが一枚上手やっただ

けや。とりあえずオレ達も道頓堀に向かうで。」

 

 

千日前通りを渡り、フリーフォールの残骸がある

HIPSを越えたところに金龍ラーメンがある。

立体的な龍の看板でおなじみのラーメン屋や。

 

 

ここは仕事上がりのキャバ嬢のために味を追求した

ラーメン屋や。従って、呑んだ後に食べるラーメン

の美味しさでは日本一やで(須藤調べ)。

 

 

さっきのサンドウィッチが中途半端だったせいで腹

が減ってきた。せっかくやし食べてから行くか。

 

ここは立ち食いスタイルで、ラーメン以外に余計な

メニューが無いからちゃちゃっと食べれておやつ代

わりにはちょうどエエ。

 

 

そんなどーでもエエ事を感じながら、改めて旅に

おける寄り道の楽しさを噛みしめた。

 

 

よっしゃ、これで腹ごしらえは完了や。さっさと道頓堀へ行きましょか。

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