トラブルはいつも突然に

トラブルはいつも突然に~⑪~

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<具体的にはな、下唇に知覚麻痺が出現したんや。>

 

 

「舌は大丈夫やったんか?」

 

 

<舌については何も言ってなかったな。>

 

 

「で、どうやってカタ付けようとしたん?」

 

 

<ガイドライン通りや。それに従い、麻痺が出現した時の対処法として、早期にビタミン剤、神経賦活剤を投与した。>

 

 

「なんそれ。」

 

 

<お前みたいなヤツはな、もう一回大学生からやり直せ。そして国試を受けろ。そして落ちろ。>

 

 

「んな殺生な。もうあの試験勉強だけは、二度としたくないわ。」

 

 

<とにかく歯科医師は、死ぬまで勉強や。研鑽し続けろ。>

 

 

「そんなん言っといて、マヒってるやんけ。」

 

 

<やかましわ、偶発症や。全力を尽くした結果や。>

 

 

「チャラ見や、て言ってたやん。」

 

 

<いちいち人の揚げ足とんなや。>

 

 

「それが技官の性癖や。」

 

 

<ほんま、エエ性格になりましたね~?あぁ~~~ん?>

 

お前は、イヤミ課長か。あの役者、天国から地獄とはまさにこの事やで。

 

 

「まあ何でもエエねんけどな、で、何をどうしたんやったっけ?」

 

 

<まずは、アデホス(神経賦活剤)を6tab分3、コバメチンを6tab分3、それぞれ2週間分投薬や。>

 

 

「コバメチンコ?」

 

 

<しょうーもない下ネタを挟むな、あぁ~~~ん?>

 

 

だから誰やねん、お前は。

 

 

 

しかし、オレ達の席から右斜め45度の席に座っている女性2人組は、このやり取りを聞いてクスクス笑っている。【ミナミの帝王】に出てくる竹井みどりと石野陽子のような組み合わせだ。

 

若い頃はオバハンにしか見えなかったが、この年になるとエラい魅力的に見えてくるで。

 

しかし、ホンマに萬田銀次郎がやってきそうなので、視線は合わせず眼中に入れておく事にした。

 

 

 

「結構な量出すんやな。」

 

 

<それだけやないで。効果をみながら、そこから約3カ月投薬するんや。>

 

 

「堪らんなぁ、マヒられた上にヤク漬けやんけ。」

 

 

<・・・>

 

 

「あ、それとな、一つよろしいか?」

 

 

<何や?>

 

 

「【投薬】てな、薬を投げるって書くやろ?お行儀悪いから、【与薬】て言うところがあるらしいで。薬を与えるって、どっちにしろ上から目線やと思うんやけどな。」

 

 

<しょーもな!しょーーーもな!!どうでもエエわ!!!>

 

 

「技官っぽいやろ?こんなんしょっちゅうやで?」

 

 

<そら、そんな性格ひん曲がるわ。こんなヤツにはなりたくないもんやで。>

 

 

「しかし、や。こういうトラブルへのシューティングは、性格が曲がってた方が適してるんやで?性格良くて優しいのはエエんやけどな、カモられるだけや。ケツの毛毟られるだけや。」

 

 

<じゃあ、どないかしてくれるんか?>

 

 

「当たり前やないか、オレに出来る事は何でもするで?」

 

 

 

心にもない事を口にする。全盛期の松坂大輔が投げるスライダーのように、鋭く曲がった自分の性格に改めて感心した。まあ、言うのはタダやからな。

 

 

 

「で、そっからどないなったんや?」

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