<やらしい男や、カネ、カネて・・・>
「いや、知っての通り技官は自費に縁が無い立場でな。だから、そういう人って一体ナンボほど自分の口に金かけてるか、聞いてみたいやん?」
<まあエエわ、教えたるか。>
「待ってました!」
<まずは初診~検査、カウンセリングまでは保険でやっとる。矯正は相談から全て自費やけどな。>
「相談くらいタダでやったったらエエのに。」
もしかしたら混合診療や二重請求の言質が取れるかもしれない。
適度に煽っておこう。
<それは邪道や。医院創設記念日にでもキャンペーンするんやったらエエわ。でもそれ以外はチャージや。タダは人間をダメにする、金銭のやり取りがあるから責任感が生まれる、て言うやないか。>
「じゃあ今日のこの相談もタダって訳にはいかんな。」
<なんでやねん!友達に身の上話を聞いてもらうのと一緒にすんなや。>
「揚げ足取りが技官の得意技や。本番では気を付けや?」
<本番?何のや?>
「個別指導や。」
<なんで今そんなん出てくんねん!関係無いやろ!>
「いや、その患者な。厚生局にチクってないかと思って。」
<な、なんちゅう事言うねや!関係無いやろ!>
「いや、こういうケースでは芋づる式で挙げられる事が多いんや。ついでにな。」
<ついでに?>
「あと、警察に通報されたら傷害罪でお縄やで?」
<な、なんやて?そんな事があるんか?>
目の前の野崎を見ると、一気に酔いが冷めて脂汗をダラダラ流している。
冷静さを失うと、パニック症候群にならなくても普段通りの判断が出来なくなる。
個別指導で準備していない穴が発覚し、そこに突っ込まれると目の前の野崎と同様に、普段ではあり得ない判断を下してしまうケースは数多く見てきた。
こういう時は誘導尋問にも簡単に引っ掛かる。だからこそ、準備はいくらしてもし足りないんや。指導直前まで気合い入れて、燃え尽きるのは結果が通知されてからにしてな。
という事で、野崎をイジめるのはこのくらいにしておこう。
「そないに心配せんでも大丈夫や、まだな。心配したり焦ったりするのは、事件が起こってからでエエ。」
<・・・>
「あ、もう事件は起こっとるんやったっけ。」
<事件ちゃうわ、偶発症や!無責任な事言うなや!>
「すまんのぉ~、目の前の相手を挑発するのが技官の仕事の一つやねん。ホンマ堪忍やで。」
<相談する相手を間違えたで・・・>
「じゃあ、もう帰ろか?」
<ここまで話したんや、最後まで聞いて行けや!>
個別指導の相談では、とりあえず話をお聞きするだけでも気を軽くされる先生方は多い。
だからこそ、選定された時点での医院の算定などは包み隠さず話して欲しい。
詳細を知る事で、具体的なアドバイスが出来る。そして指導への対策も練れる。
我々にもノウハウは蓄積されているが、先生ごとにオーダーメイドの対応をさせて頂ける。
「で?さっきの続きを聞かせてもらおか。」
