<あれは、インプラント即時埋入の当日やった。>
「コンサルの後、いきなり即時埋入したんか?」
<んな訳ないやろ、どシロートが。>
「プロセスを教えて頂いてよろしいか?」
<まずは、スケーリング・ルートプレー二ングを徹底して口腔清掃状態を整えた。>
「何か歯医者やっとるやんか。」
<当たり前や、他に何すんねん。>
「で、そこから?」
<患者自身によるブラッシングもTBIのおかげでバッチリよ。ピンク色した引き締まった歯肉になっとったわ。>
「そこはDHの見せ場やな。何かプロ集団みたいやん。」
<みたい、ちゃう。プロ集団や。>
「で、そこから?」
<インプラント埋入の準備が整ったところでな、念のためステントも作製しといたんや。>
「抜歯即時のために?お前程のインプラントロジストなら、目つぶっててもベストのポジションに埋入できるんじゃね?」
キムタクっぽく言ってみた。ロンバケの時の。知らんけど。
<まあな。>
反町隆史っぽく言ってきた。それはビーチボーイズや。それはまさかのwith リッチー・サンボラや。天下のボン・ジョヴィをwithに従えるところが、いかに反町の人気が爆発的なモノだったかを十二分に物語っている。知らんけど。
てか、今やボン・ジョヴィを聴くと無条件でなかやまきんに君が脳内でリピートされてしまう。野生爆弾のくっきーといい、20年前とやっている事が全く変わっていないのに、ある日突然全国的にブレークするんや。継続は力なりとはよく言ったもんやで。
知らんけど。
「言ってくれるやないか。何でわざわざステント作ったん?」
<んなもん、俺はいつだって患者様ファーストやからな。どんな症例だろうと全力を尽くすのみや。>
「あれ?今回のケースはチャラ見じゃなかったっけ?」
<・・・>
「たまたま作っただけか。ここへきてエエ格好せんでもよろしいやんか。」
<何となくイヤな予感がした、気がしたんや・・・>
もしそうであれば、下歯槽神経麻痺は起こしてないだろう。
トラブルが起こった際には、例外なく【あそこでこうしとけば良かった・・・】と思うものだ。
そして、その時に油断した自分を認めなくないせいか、きっちりやったと記憶を改竄してしまう事がある。そんな事は、どっちだろうとどうでもいい事だ。
なぜならいくら過去の事を考えても状況が変わる事は無いからだ。これは個別指導でも同様の事が言える。どれだけ後悔して悩んで恨んで・・・したところで、何も変わらない。
むしろ、考えているだけだから状況は悪化していく一方だろう。そんな事よりこれからどうしてこの状況を好転させるか、行動する事に全ソースを注ぎ込むんや。
「まあそれはどっちでもよろしいわ。で、そこからは?」
<いざ、アポの時間がやってきてな・・・>
