トラブルはいつも突然に

トラブルはいつも突然に~㉓~ 

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「その傍らに?」

 

<例のオトコが付き添いで来たんや。>

 

「たまにおるな、彼氏や彼女連れの患者が。」

 

<まあそんな感じや。>

 

「オレには恥ずかしくて出来へん光景やで。不純異性交遊も、どんどん欧米化されとるんやな。」

 

<単にお前が自意識過剰なだけや。誰もお前なんかに興味無いから心配すんな。>

 

 

照れ屋=自意識過剰か。分からんでもない。

 

 

 

「まあそれはエエとして。どんな様子やったんや?」

 

<ふてこい態度であった事だけは確かや。だからといって、クンロクかましてくるような事はなかったけど。>

 

「大幅に遅刻したにも関わらず、ふてこい態度か。まあ平気で遅刻を繰り返す患者に、時間を正確に守るという概念は希薄やからな。迷惑を被る側の人間の気持ちなんか、屁のカッパですわ。」

 

<まあそういうオーラ満載やったわ。>

 

「見た目は?どんな感じやったん?」

 

<リーゼントに色メガネ、中肉中背でガラの悪いシャツにスラックス、高そうな皮靴に金のネックレス、金の腕時計にブレスレッドを付けとった。>

 

 

・・・Vシネやん。

 

 

<あ、忘れとった。>

 

「何を?」

 

<セカンドバッグも持ってたわ。>

 

 

お前は、昭和のプロ野球選手か。契約更改の時か。

 

 

那須川天心と武尊の【THE MATCH】を見に行ってた時の竹内力か。

 

あれは、金髪に白のスーツに明日花キララか。萬田はん、いつからあんな胡散臭くなったんや。

 

 

 

「モロやん。分かりやす過ぎるやろ、それ。」

 

<そういうイチびったチビっ子ギャングかと思ったんや。>

 

 

どうやら野崎には、危機察知能力が欠如しているようだ。遅刻してきた挙句そんな地雷を連れてくる患者に手を付ける辺りが、それを如実に表している。

 

いや、地雷ではない。分かりやす過ぎる人間爆弾だ。

 

 

 

トラブルシューティングの第一歩は、相手との交渉について考える事ではない。

 

そもそもそういう相手とは関わらない事だ。そしてそういう相手は、分かる。なんとなく分かる。発している空気が違う。違和感とはよく言ったもんで、それを感じる相手とはわざわざ深く関わる必要はない。

 

 

しかし、医院の経営スタイルによっては背に腹は変えれない事がある、というのも一つの現実だろう。綺麗事だけでは済まない状況があるのも事実だ。

 

 

しかしそれにしても、限度っちゅうもんがあるで。

 

 

もちろん当人を目の当たりにして初めて気付いたケースだとは思うが、そもそも女性を見た時点で想像が付きそうな話のような気もする。

 

 

そういう場合は、迷わずリリースや。一人の患者を失うのは痛い事だが、利益以上の損失を被る場合はさっさと損切りや。

 

 

しかし、もはや手を付けてしまっている以上それを言っても後の祭りだ。

 

とにかく効果的な解決策を見出す事が最優先事項になってくる。

 

 

 

「まあ終わった事をあーだこーだ言っても仕方ない。そこからどうなったんや?」

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