<とにかく善は急げや。早い事インプラントを埋入せなアカン。オペ室へカムカムエブリバディや。しかし、入ってくるのもちんたらしとってな。>
「完全に相手のペースやないか。遅刻されて振り回されて、大変やな。」
<他人事みたいに言うなや。>
「だって、他人事やもん。」
<・・・まあエエわ。とりあえず患者導入や。すると・・・>
「すると?」
<Vシネも一緒に入ってきた。>
「そいつは関係ないやろ。」
<もちろんな。しかし彼女が恐がって昨日も寝不足やし、て付き添いで入ってきたんや。>
「外科処置前の睡眠不足はご法度ちゃうんか?」
<せや。あれ程よく寝て朝ごはんしっかり食べて来て、て言ったのに・・・>
「朝食も抜きか?」
<リッツカールトンで済ませてきた、て。>
「ブルジョアやないか。で、リッツでのんびりして遅刻か。右ストレートを挿入してやりたいな。」
<どこに入れんねん、それ。何かどっかで聞いた事あるけど。>
「そんな事はどうでもエエんや。要するに余計なタンコブがしゃしゃり出てきた訳か。」
<せや。エエ予感はしてなかったけど、まさかこんな展開になるとは・・・>
「さすがに予想は出来へんな。」
<予想の斜め上を行ってたわ。>
「で?」
<オペ室に二人揃ってカムカムエブリバディや。>
「オペ室に不潔人間を入れたらアカンのちゃうか?」
<そう。上手い事言って追放したろかと思ったんやけどな、〔じゃあウチのオンナはどうなんねん?おぉ?〕てクンロクかまされてな。>
「ビッグチャンスやないか。」
<どこがチャンス大城やねん?>
「診療妨害ということで、オペ中止です。インプラントの契約も破棄します。みたいに、逃げるチャンス到来やないか。」
<そん時におってくれや・・・>
「大方そのVシネのプレッシャーに気圧されて、同室を許可したんやろ。」
<結果的にはな。>
「何が結果的に、や。という事はつまり、なんちゃってオペ室って訳やな。」
<なんちゃって、て何やねん!ちゃんと清潔・不潔は区別しとるわ!>
「不潔なVシネが潜りこんどるやないか。」
<それとこれとは関係ない!・・・侵入を許したのは確かやけど。>
「じゃあせめて、ガウン着させて格好つけさせるだけでもしたんか?」
<いや、来た時のまんまや。>
リーゼント、金のネックレス・ブレス・時計、趣味の悪い服、セカンドバッグ・・・
そんなヤツが治療中に目に入ったら笑ってまうやろ、絶対。
「ちゃんと治療に集中できたんか?」
<当たり前や、俺を誰やと思っとるんや。ところがのっけからな・・・>
