<まずはハリケインゲルや。>
「なんそれ?なんか、ケイン・コスギみたいな名前やな。」
<しょーもない事言うな、表面麻酔や。>
野崎の目が、筋肉番付やスポーツマンNo.1決定戦に出場していた頃のケイン・コスギみたいにイッている。
知らんけど。
「あぁ、あのバナナ味の。」
<味は何でもエエんや。とりあえず患者様の精神的不安を取り除く事からスタートや。>
「表麻なんかで取り除けるんか?」
<そこがデンティストとしての腕の見せ所や。優しい声掛けと的確な手技でリラックスさせて、βエンドルフィンを放出させるんや。>
「【悟空のきもち】みたいやん。ほら、あの絶対に眠りに落ちるヘッドマッサージの。」
<いちいち話逸らすなや。とにかくそれで患者様はイチコロや。>
「いちいち【様】つけんなや、お前が言うと胡散臭いフレーバーがするだけや。化粧も厚い事やし、ケバ神でエエやないか。そっちの方が高貴なオーラが立ち込めるやろ。」
<ヒザ神(アメトーーク)みたいに言うな。>
「でも、Vシネが手繋いどるんやろ?」
<せやねん。ウチの女泣かせたらただじゃ済まさんぞ?てガン付けてきてな。>
「いや、笑かしにかかってきとるんやろ。」
<浸潤麻酔しようと針を齦頬移行部にジェントルに刺した瞬間や。>
「何がジェントルや。この偽善者が!」
<やかましわ。渡哲也ぐらいジェントルにしたったわ。>
「石原軍団にシバかれそうなVシネを目の前にして、よくそんなノリで行ったな。」
<すると・・・>
「すると?」
<そのケバ神が【ビクゥ!】てなったんや。>
「まさか・・・」
<痛みに弱い女やったんや。>
「なんやしょーもない。そんなんどこにでもある話やないか。」
てか、よくそんな患者にインプラント埋入する気になるな。利益以上の損害を被るようなババやないか。
知らんけど。
<ホンマ堪らんかったで。>
「アナフィラキシーショックちゃうんやから、良かったやん。それにまだ下歯槽神経は破壊してへんのやろ?」
<だから、破壊ちゃうわ!>
「まーエエやん、どっちでもよろしいわ。」
<Vシネがツッコミ入れてきてな。>
「ツッコミ?」
<〔気を付けろや!脈拍数が上がったやないけ!!〕てな。>
「脈拍数?」
<ドキッとしてな、Vシネの方を見たんや。>
「目が合うだけで笑ってまいそうなんやけど。」
<脈を測ってたんや。>
「手を繋いどったんちゃうんかい。」
<いつの間にか救急隊員気取りや。>
「それはツッコミちゃう、完全に笑かしにかかってきとんねん。お前がツッこまなあかんボケやで。」
想像するとシュールな現場やで。絶対に笑ってはいけない浸潤麻酔や。
<そんなんできるか!あのVシネがVシネしてきたら、どないするんや。>
VシネがVシネ・・・どんな状況や。まあ、いきなり修羅場で面白くなってきたで。
