「で、浸麻が奏効した後は?」
<まずは抜歯からや。>
「へーベルなんか持ち出したら、Vシネが何言ってくるか分からんのちゃう?」
<やるしかないやろ。もう引き返されへん。後戻りは矯正だけで十分や。>
矯正での後戻りは、トラブルへの入り口ちゃうんか。
「でも、相変わらず笑かしにかかってきとったんやろ?」
<あのなぁ、あの状況で笑えるとでも思っとるんか?>
「笑ってはいけない状況であればある程しょーもない事で笑ってしまうって事は、大晦日に証明されとるやないか。」
<あれはあの5人を笑わせようと、作家や演者が抜群のチームワークでネタを繰り広げとるんや。>
「Vシネとケバ神だって、チームワーク抜群やないか。」
<ちゃう、大真面目や。二人とも真剣な眼差しやったからな。笑いがこみ上げてきたわ。>
「いろいろ格好付けとるけど、結局は笑っとるやないか。」
<我慢や我慢。尻シバかれるだけじゃ済まんからな。>
「よくそれで集中してインプラント埋入ができるな。で、上手く歯は抜けたんか?」
<当たり前や。細心の注意を払って、即時埋入のための抜歯をしたんや。>
「普通の抜歯とは違うんか?」
<抜歯をすると、頬側骨が吸収するやろ?>
「ちょっと何言ってるか分かんない。」
<よっしゃ、じゃあ教えたろ。>
野崎の顔がイキイキとしてきた。
人に教えるのが好きなのだろう。そして、歯科治療が大好きなのだろう。
歯科に対する情熱や愛が伝わってくるで。
<要するに、や。抜歯即時埋入においては骨の存在が重要になってくる。>
「成熟側に埋入する時も同じじゃないんか。」
<状況が違うやろ。抜歯をしたら、その部位はどうや?スッカスカのスカス~カやないか。>
「じゃあどうなるんや?」
<インプラントの維持が不可能やろが。そこで、や。>
「そこで?」
<骨の吸収を最小限に抑えるために、へーベルのかけ方を工夫するんや。>
「・・・」
<頬側に力いっぱいかけると、後の吸収にも当然、影響してくる。>
「・・・」
<そこで・・・>
「んごおぉぉぉ~~~」
<おぉい!>
「ん~?あ、あぁ・・・おはよう、大島。」
<児島だよ!>
アカン、寝てしもた。たまにある、起きた瞬間どこにいてるか分からんくらい気持ち良かった。
<寝るな!俺の特別講義やぞ?>
「スマン。」
<何を寝とんねん!>
「そんなこと言ったってねぇ、私は寝てないんだよ!」
雪印の逆ギレを思い出した。
<そんなん知らんがな!>
「あのなぁ野崎よ、オレは技官や。そんなアカデミックな話、興味あると思うか?」
<歯科医師の風上にも置けんヤツや。ちょっとは学習意欲は無いんか。>
「技官が興味あるのは保険のルールに則ってるかどうか、だけや。」
<ツレないのぉ。>
「そんなん、来たる個別指導でかましてたらソッコー再指導やぞ?イヤ、中断か。」
<な、なんでやねん!何が来たる、や。>
「まあ覚悟はしときや。そのVシネがどれだけ裏で動いとるか分からんだけにな。」
野崎の顔が青ざめてきた。話を中断するには、これくらいのスパイスが必要や。
では、続きを聞こうか。
